「預り金」のおかげで資金繰りがうまくいっている

【中村】「預り金の増減額」? 377億円ですね。これが何だっていうんですか?

【宮田】まさにこれがメルカリの儲けの秘密、ビジネスモデルのポイントです。中村さんはメルカリで何か売ったことはありますか?

【中村】DVDとか漫画とか……あとたまに服も売りますね。

【宮田】売った後のお金ってどうしてます?

【中村】貯めておいて、メルカリ内での買い物やメルペイで使ったりしますね。

【宮田】それです。その中村さんがすぐに使わないお金がメルカリに残っているんです。これは預り金といって、メルカリがユーザーから一時的に預かっているお金ですが、このお金のおかげでメルカリは資金繰りがだいぶラクになっています。

【中村】ということは、メルカリが事業を伸ばせば、この預り金は増え続けるんですか?

【宮田】理屈としてはその通りです。メルカリが最も重視しているのはGMV(Gross Merchandise Value=流通取引総額)と言われる指標です。これは簡単に言うと、メルカリで取引された商品の流通総額。このGMVのうち、一部が手数料としてメルカリに入ってくる。それがメルカリの売上高になるというものです。

【中村】そのGMVって、実際どれぐらい伸びてるんですかね?

【宮田】2017年6月期は2320億円でしたが、その後成長を続け、18年6月期は3468億円、19年6月期は4902億円、そして20年6月期は6259億円と増え続けています。

【中村】増えまくりですね!

【宮田】これだけ取引が増えれば、預り金も増えていきますね。だからメルカリが会計上の赤字を増やそうが、GMVが伸びている限り、資金繰りは大きな問題にはならないんです。

このカラクリはP/LとB/Sを読むだけではなかなか見抜けません。特に利益とキャッシュにズレが生じるメルカリのような企業ではC/Sの確認は必須です。

メルカリの財務体質は健全か危険か

【宮田】さて、ここで質問です。営業CF、投資CF、財務CFそれぞれプラスとマイナスの2種類あります。ということは全部でC/Sは2×2×2で8パターンあることになりますよね。

【中村】はい。2020年6月期のメルカリは、営業CFはプラス、投資CFはマイナス、そして財務CFは少しプラスですね。

【宮田】ということは、メルカリの財務体質は健全? それとも危険ですか?

【中村】2020年6月期でいうと、具体的にはメルカリの営業CFは125億円、投資CFはマイナス27億円、そして財務CFは4.7億円。そしてこれらを合計した結果、お金が増えていますね。キャッシュの残高も増え続けています。安全……って言いたいけど、キャッシュが増えているとはいえ、借金ばかりだとむしろ経営的には厳しくなりますよね。実際、直近ではわずかといえど、財務CFはプラスになっていますし。