王者ナイキは“新モデル”がそろそろ登場か⁉
ただ、シェアを下げたナイキだが、今回もひたすら速かった。全10区間中8区間で区間賞を獲得している。これは気象条件に恵まれただけでは説明がつかない。1区吉居大和(中大2年)、9区中村唯翔(青学大3年)、10区中倉啓敦(青学大3年)が区間新記録を樹立。さらに3区丹所健(東京国際大3年)も日本人最高記録で走破した。
これでナイキは箱根駅伝の全10区間すべての記録(区間記録+2区と3区の日本人最高記録)を“完全制覇”したことになる。
区間賞獲得者では2区の田澤廉(駒大3年)が『ズームX ヴェイパーフライ ネクスト% 2』(以下、ヴェイパー/税込み2万6950円)。他の6人は前足部にエアが搭載されている『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』(以下、アルファ/税込み3万3000円)だった。
前回大会の区間賞は2、5、8、10区が「ヴェイパー」で、1、3、4、6、9区が「アルファ」だったことを考えると、アルファが多くなった。ちなみに総合優勝を果たした青学大の選手は10人中9人がナイキを着用。6人がアルファ、3人がヴェイパーを履いていた。
なお元日に行われたニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)は出場259人中201人がナイキを着用(77.6%)。アシックスを履いていた細谷恭平(黒崎播磨)が最長4区で区間賞を獲得した以外、残り6区間はナイキが区間賞を奪っている。6人中5人が「ヴェイパー」で「アルファ」は1人。“シューズ選択”は箱根駅伝と対照的な結果になった。
今回はパイを奪われたかたちのナイキだが、この1年間のプロモーションを振り返ると、レース用シューズのプッシュが非常に弱かった。というのも同社最高峰モデルである「アルファ」は2020年1月にプレス発表があり、同年3月1日の東京マラソンで本格デビュー。その後は新色モデルなどを出すのみで、シューズのアップデートはされていないのだ。
つまり、約2年“沈黙”しているのだが、何もしていないはずがない。
男子マラソンの世界記録保持者で五輪を連覇したエリウド・キプチョゲ(ケニア)のインスタグラムには新型アルファフライのプロトタイプと思われるシューズを確認することができる。
ナイキはビッグイベントの前後に新モデルの発表をすることが多い。マラソンは春(3~4月)と秋(9~11月)に国際的なメジャーレースが集中している。ということは新モデルの登場はそろそろではないか。そんな憶測が業界内では飛び交っている。2022年の箱根駅伝で奪われる側にいたナイキが再び攻撃を開始する予感が漂っている。