「アディダスとアシックスの反撃」3ブランドがパイを奪い合った

前回はナイキが驚異的な数字を残している。210人中201人(95.7%)。今回は210人中154人(74.0%)とシェアを下げた。ナイキが持っていたパイをアディダスとアシックスが奪ったかたちになった。

いや、「パイを奪い返した」という表現が正しいのかもしれない。なぜならナイキ厚底シューズが登場する直前の2017年大会はアシックスが67人(31.9%)、アディダスは49人(23.3%)の使用者がいたからだ。

まずは前年4人から28人に飛躍したアディダスから見ていこう。主立ったところでは、2区と3区で区間記録を保持するイェゴン・ヴィンセント(東京国際大3年)と前回5区で区間賞を獲得した細谷翔馬(帝京大4年)がナイキから履き替えている。ヴィンセントは左足に痛みが出たこともあり、2区で区間5位の記録に終わったが、今回、5区を務めた細谷はかつて「山の神」と呼ばれた柏原竜二(東洋大OB)以来となる“連続区間賞”に輝いた。

3区で区間歴代3位の快走を見せた太田蒼生(青学大1年)もアディダスを履いていた。

太田はこの区間で1位を奪取し、そのままチーム往路・復路完全優勝に導いた。レース中、青学大の原晋監督は「ヒーローになっていくよ、ヒーローに!」と後方から声をかけ、実際にヒーローになった。

第98回箱根駅伝で、ナイキやアシックスなどのメーカーのシューズを履いてレースに挑む選手たち=東京都千代田区で2022年1月2日、手塚耕一郎撮影
写真=毎日新聞社/アフロ
第98回箱根駅伝で、ナイキやアシックスなどのメーカーのシューズを履いてレースに挑む選手たち=東京都千代田区で2022年1月2日、手塚耕一郎撮影

ヴィンセントと太田は『アディゼロ アディオス PRO 2』(税込み2万6000円)、細谷は『アディゼロ タクミ セン 8』(税込み2万円)と思われるモデルを着用。いずれも5本指カーボン(もしくはグラスファイバー)が搭載されている厚底タイプだ。

なおアディダスとユニフォーム契約を結んでいる青学大は太田以外の9人がナイキを履いていた。近年、アディダスを履く日本人ランナーで“顔”といえる選手がいなかったが、現役復帰時からナイキを着用してきた東京五輪陸上女子1万メートル代表の新谷仁美(積水化学)と契約。最近は新谷が広告塔の役割を担っている。今後は箱根駅伝で新たなヒーローになった太田がプロモーション活動に登場するかもしれない。