さらに重要なのはここからだ。具体的な目標を設定したうえで、それを達成できるよう、生活の中に組み込んで習慣化させる。これを「仕組み化」と呼んでいる。その際、カギを握るのは、いかに目標を「因数分解」するかだ。

ぼく自身の例をあげよう。 大学を卒業して日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)へ就職後、アメリカへ留学して見聞を広める目標を立てた。それには英語力を高め、難関の社内試験に合格しなければならない。これが当面の具体的な目標になった。そこで、毎朝1時間早く起きて、誰にも邪魔されない時間に英語を勉強する習慣を生活に組み込んだ。

どんな目標も因数分解できる。「千里の道も一歩から」というが、遠大な道のりも因数分解すれば、一歩の単位にまで分解できる。その一歩を積み重ねる仕組みがあれば、必ず目標は実現できる。

もし、単に「毎日1時間英語の勉強をする」という目標を立てただけだったら、夜はたいがい誰かと酒を飲んでいたから勉強は続かなかっただろう。毎朝1時間の早起きと勉強を組み合わせたことで仕組み化され、社内試験をクリアできた。そして、26歳のときにハーバード大学のビジネススクールに留学し、チャレンジングな仲間と接したことで起業を意識するようになり、楽天創業に至るのだ。

天才といわれる運動選手も華々しい表舞台の裏には、考え抜かれ、創意工夫された練習がある。ましてや凡人は細かなことも継続的に実践し、日々改善し、発展させていく仕組みがあって、初めて目標に到達できる。1日0.1%の改善でも、仕組み化し、1年間続ければ44%の改善になる。

ぼくはいまも仕組み化を実践している。例えば、デスクワークが多いなかで足腰を鍛えるため、週2回、会社のミーティングルームで行われる会議に出るときは自分の部屋から階段を10階分歩いて下りることにした。段数にして毎回220段。年間で約2万段になる。万歩計機能付き携帯電話を持つことで、歩数を見える化し、仕組み化を強化した。

しかし、仕組み化をしようにも、目指す目標そのものがなかなか見えない人も多いだろう。大きく踏み出すための目標は、自分の人生にとって必要不可欠なものであるべきだ。それが見えないとき、人は考えたまま、結局、踏み出せずに終わってしまう。それは頭だけで考えるからで、わからなければ行動すればいい。

※すべて雑誌掲載当時

(勝見 明=構成 二石友希=撮影)