新庄監督の“奇策”に「惑わされてはいけない」

彼らに共通するのはセンターだということ。秋山はこういっていたそうだ。

「センターは守っていて、すごく勉強になるポジションでした。ピッチャーを真後ろから見るから、すぐに調子がわかる。今日はいいね、今日は悪いねと」

新庄も同様のことを『もう一度、プロ野球選手になる』で書いている。彼もセンターだから、3人に連なる可能性なしとはしない。

それにプロ野球界の現況は、群雄割拠といえば聞こえはいいが、セもパもドングリの背比べで抜きん出たチームはいない。セもパも2021年にリーグ優勝したのは前年最下位のヤクルトとオリックスだった。パはソフトバンク一強時代が長く続いたが、それも終わり、どこが優勝してもおかしくない。

新庄にとっては願ってもない状況だが、とはいえ、今のチームの力ではAクラス入りさえ難しいというのが衆目の一致した見方である。

新庄監督は4番に俊足の五十幡を置き、6番に4番打者クラスを置くという“奇策”を口にしているが、ある球団の首脳陣は、

「今の日本ハムには打線の核になる1、2番もクリーンアップもいない。そのピースの不足を冷静に把握しているからこそ、選手の競争心をあおるための内部に向けた“宣伝”なんでしょう。戦う側はそれに惑わされてはいけない。日本ハム戦は取りこぼしてはいけない」(東スポWeb、12月22日より)

新庄日ハムは相手チームにとっては「お客さん」だというのだ。

観客のいない野球場
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チームの誰よりも目立っているのが監督なら…

落合は1年目、現有勢力だけで戦ってリーグ優勝したが、2年目はチームに必要のない選手を容赦せず切った。契約を1年にした新庄は、すぐに結果を出さなくてはいけないが、日本球界といえども、そう甘くはないだろう。

ならばこういう究極の奇策はどうだろう。新庄監督が現役登録してセンターに入り、そこから選手たちに指示を出すというのは。これなら、自軍の投手の好不調が見て取れるし、相手チームのバッターたちが何を狙っているのかも分かる。

センターに抜けたボールを取って自慢の肩で3塁走者をホームで刺せば、味方ファンならずともスタンディングオベーションになるはずだ。

長嶋がそうだったように、巨人の選手の中で一番目立っていたのは監督だった。球場に来ているファンも、テレビを見ている人間も、監督の一挙手一投足を見ていたのである。