紙による証明書、民間のアプリ、都のアプリも登場
そのシステムを引き継いだデジタル庁からすれば、「入力誤りは自治体の責任」ということだが、自治体からすると「新しいシステムに振り回された」ということになる。しかも、デジタル庁から自治体への情報提供が遅く、アプリがいつ運用されるかもなかなか分からずじまいだった、という。結局、データの確認作業も自治体任せで、自治体は作業に忙殺されている。
アプリのサービス開始が予想以上に遅くなったことも混乱の要因だ。結局、証明書の発行も、各自治体の紙による発行が先行。飲食店などは、この紙の証明書や接種時の記録シールを撮影した画像などでの確認をすでに始めていた。もちろん、証明書の元データはVRSが使われており、システムの構築自体を無意味だったとは言えない。だが、アプリに関しては国のリリースが遅れている間に、協賛飲食店のクーポンなどがもらえる民間のアプリも始まったほか、10月にはワクチン接種証明を登録する「TOKYOワクションアプリ」もスタートしている。新たに導入されたアプリの国内版がどれぐらい使われるかは未知数だ。
最大のネックは「マイナンバーカード」
しかも、最大のネックなのが、マイナンバーカードが必要なことだ。マイナンバーカードの普及率はようやく4割に達したばかり。しかも「バラマキ」批判を横目に、普及させるためにマイナポイントの付与など大盤振る舞いをしてきた。2021年度補正予算案に1兆8000億円あまりを計上、カード取得者に最大2万円分のポイントを付与することも決めている。
「天下の愚策としか言いようがない」――。衆議院予算委員会で質問に立った立憲民主党の小川淳也政調会長はこう批判した。「マイナンバーカードを普及させるのに登録したら5000円、保険証を登録したら7500円、公金口座の登録をしたらまた7500円。2万円もの現金を渡さなければ作ってもらえないカードって一体何なんですか?」
クレジットカードが新規入会者にポイントを付与するのとは訳が違う。クレジットカードなら、その後の利用による収益増でポイント分を回収できる。マイナンバーカードにそれだけの金額を投じて普及させて、どれだけ行政コストが下がるのか、明確な答えは見えていない。「2兆円あれば、どれだけ困窮者支援ができますか」という小川議員の疑問は誰もが感じていることだろう。