【Kazim氏】南アフリカも動いている。意外なところでは、ミラノ発ニューヨーク行きが好調だったりする。搭乗率が90%を超える便も出てきており、エコノミーよりもビジネスやファーストクラスの予約が増えている。需要の旺盛なところにA380を集中投下し、58機を稼働させている。コロナ規制緩和による需要のV字回復の時期にはA380がふさわしい。

ドバイエアショーの開幕フライトディスプレイとエミレーツ航空のA380型機
筆者撮影
ドバイエアショーの開幕フライトディスプレイとエミレーツ航空のA380型機

「需要は他社よりも早く戻る」という確信

——コロナ後を見据えての将来展望を教えてください。

【Kazim氏】UAE政府は2025年までにこのエアショーが行われているドバイワールドセントラル空港の拡張工事の完成を約束してくれている。これによりさらなる増便や目的地の追加ができる。

コロナ禍のリスタートにおいて90%の就航地に飛ばすことができ、搭乗率は60%の水準にまで戻している。近い将来、さらに拡充できることは確実だ。コロナ禍前の水準に戻るのは2022年半ばだと予測しており、A380もさらに多くの目的地に飛ばしたいと思っている。

人々は長きにわたって旅行をすることができなかった。再び旅行したいと思う人々にわれわれのサービスは確実に響くと考えており、需要は他社よりも早く戻るだろう。われわれの前には明るい未来が広がっていると考えている。

エミレーツ航空A380展示機全景
筆者撮影
エミレーツ航空A380展示機全景

Kazim氏へのインタビューは、同社の将来に向けての手応えが感じられ、世界規模の野心を目の当たりにした。物腰は柔らかで静かながら自信に満ちており、「ドバイは世界の中心」と言い切る姿勢には驚かされた。

エミレーツ航空が大型機を飛ばし続けるワケ

エミレーツ航空は2021年12月16日にエアバスからA380を受領した。2008年以来13年かけて全ての機体の受け取りを終えた。エアバスはA380の生産をやめており、これが最後の同型機だ。

これを報じるリリースで、エミレーツ航空CEOのティム・クラーク卿は「発着枠に制約のある空港での需要に効率的に対応し、私たちのネットワークの成長を強化する機会を与えてくれました」と述べている。

後発のエミレーツ航空が混雑する各地の主要空港に乗り入れるには歴史あるエアラインと戦い、発着枠を獲得するしかない。ここに1機で多くの旅客が運べるA380が投入される理由がある。

理由はそれだけではない。先述したAdnan Kazim氏の話にもあったが、地元政府の描く国家戦略と強力な後押しは大きい。今回のインタビューでAdnan Kazim氏は、ドバイワールドセントラル空港の拡張工事が2025年に完成する見込みだと教えてくれた。

現在のドバイ国際空港は8600万人(2019年)が利用する世界4位の空港だ。ドバイワールドセントラルの機能向上した新空港は、1億6000万人が利用でき1200万トンの貨物を扱う世界屈指のハブ空港になる見込みだ。