搭乗したビジネスクラスに向かうと、意匠はファーストクラスに準じている。クリームやシャンパンの色彩があしらわれた上質なチェアに身体を休めるという言い方がふさわしいくつろぎがある。
4500チャンネルもあるという機内エンターテインメント「ice」システムを搭載する23インチのインフライトエンターテインメント画面は大きく、遠過ぎて届かないスクリーンゆえに、手元で操作できるハンディ機器に加えタブレットまである。シート周りには、ミニバーがあり、配られたアメニティはブルガリ製であった。
顧客対応で水準以上のサービスを受けることができるのは、世界160カ国以上から雇用した客室乗務員の存在が大きい。搭乗した便には日本人の他に、ウルグアイと日本のハーフの男性客室乗務員も乗務していた。
コロナ禍で乗客は減少したものの、こうした機材運用で世界の富裕層を取り込むことに成功している。それもエミレーツ航空が大型機を飛ばし続ける理由に挙げられる。
エミレーツ幹部「需要のV字回復の時期にはA380がふさわしい」
話を戻そう。筆者はドバイエアショーの会場で、同社ナンバー4の役職となるChief Commercial OfficerのAdnan Kazim氏に単独インタビューする機会を得た。この取材からも同社が大型機を飛ばし続ける理由が浮かび上がってくる。
——コロナ禍によって社の戦略が変わるようなことはあるのでしょうか。
【Kazim氏】われわれはドバイという「世界の中心地」におり、世界の東西を結ぶ役割を果たしてきた。これはハブ&スポークでマーケットの開拓を行ってきたことに他ならない。今後も変わることはないだろう。他社は機内サービスを縮小しているところもあるが、エミレーツ航空では一切のコスト削減はしていない。
——コロナ禍で他社はA380を定期運航から外していますが、エミレーツ航空が使い続けている理由を教えてください。
【Kazim氏】需要予測として、現在は世界中の多くの人が早く旅に出たいと待っている状況だ。欧米でコロナ規制が緩和されたことが大きいとみている。多くのマーケットで予約が非常に好調に推移している。欧州主要国の中では特に英国とともに、フランス、ドイツ、スイス方面の需要が高い。