第4条「今期予想はどうか」
今期予想(図表1-④)は、その四半期が属する事業年度に、どれくらい売上や利益を上げるか、会社自身が予想した数字です。
株価は、過去の業績よりも、将来の業績(=推定される未来の企業価値)に応じて値動きします。そのため、「業績予想」欄は重要な意味を持ちます。
注目すべきは、業績予想に変化があったときです。
業績予想の修正は、決算発表より前に発表され、決算時にはその修正が反映された数字が記載される場合と、決算発表と同時に発表される場合があります。
決算短信に「修正の有無:有」となっている場合は、決算と同時に業績予想が修正されています。「修正の有無:無」であっても、事前に修正が発表されている場合もあるので注意してください。
ただし、成長株の場合は、下方修正であっても「先行投資」による前向きな「下方修正」というケースもありますので、修正理由や内容は確認しておきましょう。
第5条「進捗率と四半期特性はどうか」
ただし、業績予想は「保守的な予想しか出さない会社」もあり、そういう企業の場合、業績を上方修正することが多くなります。逆に「楽観的な予想を出す会社」もあり、『会社四季報』(東洋経済新報社)などで「会社計画は過大」と書かれたり、業績未達で推移することが多くなります。予想を真に受けてはいけないということですね。
そこで大切になってくるのが、第5条の進捗率(図表1-⑤)になります。
「業績進捗率」は決算短信の中に記載されているわけではなく、電卓などで計算する必要があります。
この記事で紹介したレーザーテックの2021年6月期第3四半期時点の今期予想は、すでに第3四半期まで終わっているので、実績値が出ています。
売上は、第3四半期までの累計で519.5億円、通期の予想が620.0億円。今までのペースでもう1四半期分、売上が増えた場合、実績値の約1.33倍が想定される通期売上になります。
レーザーテックの2021年6月期第3四半期までの進捗率は、「5195×1.33=6909 6909/6200=1.1144」で計算します。すると、売上進捗率は111.4%になります。
●第1四半期の場合:4倍
●第2四半期の場合:2倍
●第3四半期の場合:1.33倍
つまり、このペースで行くと会社予想を11%超上回って着地することになります。
一方の経常利益はこれまでの累計が189.6億円で、通期予想が200億円ですから、「1896×1.33=2522 2522/2000=1.26」と会社予想より26%増益になりそうです。
そして、実際の本決算では売上702.5億円(>690.9億円)、経常利益264.4億円(>252.2億円)と、第3四半期時点の累計の1.33倍をさらに上回る好結果となりました。
このように、同じ決算発表でも、第1~第3四半期は会社の通期予想に対する進捗率を計算して、業績が会社の予想通りに進んでいるかどうかを確認しましょう。
一方、売上、利益とも業種・企業によって季節差が強く出る場合もあるので、「四半期特性」がどうなっているかを確認することも大切です。
ゲーム会社の任天堂(7974)の場合、12月のクリスマスが入った第3四半期に、突出して売上も利益も大きくなるという特徴があります。同じゲーム機を販売していても、ソニー(6758)の四半期売上・経常利益にそこまでばらつきはありません。ゲーム外の事業も多く手がけるソニーと比較して、任天堂はクリスマス商戦が大きな稼ぎ時と分かります。
他にも、公共事業など国や地方自治体からの受注が多い企業の場合、予算執行の「年度末」になる1~3月期の売上が大きくなり、逆に「年度初め」の4~6月期には少なくなる傾向があります。
投資する際は過去の決算短信を四半期単位で紐解いて確認するようにしましょう。
(第2回につづく)