煙に巻くのに本質を突く、それがプロ

お笑いビッグ3は、ただ面白いことを言える天才というだけじゃなくて、世の本質を突いたことを言いますよね。

私事になりますが、さんまちゃんとの忘れられない出来事があるんです。局アナ時代、今から40年近く前のこと。プロレスの実況で売れはじめた頃です。

吉本興業(現・よしもとクリエイティブ・エージェンシー)の東京支社長から「うちに入らないか」と誘われたことがありました。

吉本興業なんてお笑いの王国じゃないですか。

「なんでアナウンサーの僕なんですか?」

と聞いたら、部門を広げたいとのこと。今なら、様々なジャンルの人が吉本と契約していますが、当時はまだお笑い専門。それまで僕は吉本に行きたいと考えたことはありませんでした。芸人さんじゃないんだし。でも、「フリーになりたい」欲はその頃から十分にありました。

そんな時、まだ顔見知り程度だったさんまちゃんと、たまたま廊下ですれ違ったので、

「ちょっとご相談があって……」と、控室に引きずり込んだんです。

「吉本の東京支社長からお誘い受けたんだけど、僕は吉本興業に行ってもいいですかね」

とストレートに聞いたら、言下に、

「やめなはれ」と。そしてたたみ込むように、

「うちなんか来たら大変や。ギャラのほとんどは事務所に持ってかれまっせ!」半分ネタだけど、半分は本当だと思いました。それでチラリとよぎった吉本興業入りはやめました。いきなり相談されたのに、即座に「やめなさい」と答えるさんまちゃんの、あの本質を突く部分はすごいですよね。

番組収録に5時間半遅れたさんまの“すごい言い訳”

もちろん、すごくないところもありますよ。

『オシャレ30・30』っていう『おしゃれカンケイ』の前身の番組の司会を僕がやっていた時、ゲストだったさんまちゃんが5時間半ぐらい遅れて来たんですよ。悠長な時代で、みんなでずっとスタジオで待っていました。

急いでいるビジネスマン
写真=iStock.com/NanoStockk
※写真はイメージです

さんまちゃんは遅れてスタジオに入ってくるなり、「すんません、すんません、すんません」って、ちゃんとみんなに頭下げて。でも、一応言っておかないといけないと思い、収録の冒頭で半分冗談半分本気で言ったんですよ。「何でこんなに待たせるんですか。何時間も何時間も待たせて。釈明しなさい」

って。そしたら僕の方を向いて真顔で、

「古舘さんやから本当のこと言うわ。赤坂プリンスホテルに泊まってたんですわ」

朝の8時半ぐらいにロビーに着いたマネージャーから、

「そろそろ下りてきたらどうですか」

とキレ気味に電話がかかってきたんだけど、でもこの言葉に、

「芸人を甘く見られちゃ困る。絶対に下りるもんか」

と思ったと。そして、スタジオに行きたいのをずっと我慢してたって言うんです。7割ぐらい話をつくっていると思うんですけど、

「ぐーっと我慢するこの気持ち、わかってな」

と言って笑いを取る。かなわないと思いました。さんまちゃんだから許されるんですよ、これは。