コロナ禍で財政赤字をGDPの3%以内とするEUの財政ルールが棚上げされたこと、脱炭素化・デジタル化にかなう公的支出が容認されたこと、EU復興基金からの資金配分が見込めることなど、財政拡張への追い風は強まる一方だ。
中道右派政権の下で、それを分配ではなく成長のために費やす時代に、フランスは突入することになるだろう。
なおマクロン大統領が勝利しても、中道の与党・共和国前進は議席を大きく減らしそうだ。代わって議席を積み増すと予想されるのが、中道右派の共和党である。
もちろん、ペクレス氏が大統領選で勝利すれば、共和党が第一党になる道が開ける。とはいえ単独過半数は難しく、いずれの候補が勝利してもハングパーラメントになる可能性が高い。
生き残りをかけて自民党化するマクロン大統領
保革の立場を問わずに「大きな政府」を志向するというのはフランスの伝統だ。「小さな政府」を目指すと言って当選したマクロン大統領も、結局はそうしたフランスの伝統にのまれてしまった。
とはいえ、このタイミングで「大きな政府」の道を模索することはフランスの経済を考えるうえでは、あながち間違いではないのかもしれない。
なぜなら、フランスが志向する「大きな政府」路線は、EUが描く経済成長戦略と高い親和性を持つからだ。政府による強いイニシアチブがなければ、脱炭素化とデジタル化を両輪とするEUの経済成長戦略は実現不可能である。
フランスの「大きな政府」が先頭に立ってこの経済成長路線を実現できれば、EUでの指導力は確たるものになる。
他方で、そもそも「大きな政府」が民間の活力をそいできたからこそ、先進国を中心に各国で国営企業の民営化などを推進し、「小さな政府」の実現を模索してきた歴史的な事実もある。
フランスの新政権が経済的なパフォーマンスを残すことができなければ、結局のところフランスの対外的な評価は世界中で低下を余儀なくされるだろう。
日本でも近年、本来なら中道右派に属する自民党政権の下で「大きな政府」路線を強めている。その功罪はともかく、フランスの新政権と自民党政権の親和性は高そうだ。