ネオンブームには、全く気付いていなかった

ファッションでは強い発色の蛍光のネオンカラーが世界的に流行し、2019年のパリコレでは多くのトップブランドが採用し話題となった。近年の日韓のファッションシーンでもネオンカラーは流行色であり続けている。

音楽では、5年程前から80、90年代の日本のシティポップが欧米で人気となり、それが韓国にも伝わり音楽の一つのトレンドとなっている。2019年のK-POPのヒット曲に、韓国で活躍する日本人歌手YUKIKAが歌った『NEON』がある。

日本人歌手が韓国で80年代風のシティポップを韓国語で歌ったこの曲は、日韓両国の若者たちの流行の相関性を象徴していると言えるのではないだろうか。

写真家の性か、個人の嗜好か、私は移りゆく時代の中で社会から消えていきつつあるものに、目を向けてしまう志向がある。

私自身、ネオンブームがやってきていることには、全く気付いてはいなかった。ネオンを意識するようになったきっかけは、今から2年前、ある編集者からネオンの写真を撮ってみませんか、と誘われたからだった。

街からネオンは消えつつあるが、ネオン制作の技術を継承していくために新たなムーブメントを起こしている人達がいる。それを写真に残しませんかと。その活動と共にネオンと言えば関西なので、関西のネオンを撮りにいきましょう、という誘いだった。

「東京のネオン」を写真に残すということ

当時、私は東京の下町に住んでおり、東京下町から消えつつある昭和的風景を撮影し続けていた。その撮影では建築撮影で多用されるシフトレンズを使っていた。

東京都大田区(筆者撮影)
東京都大田区(筆者撮影)

そのレンズを使う場合はきっちり三脚を構えて撮るのがセオリーだが、近年進化が著しいミラーレスカメラを使うことで、手持ちでもピント合わせが容易になり、スナップ感覚で撮影出来るようになった。

私がネオンを撮るのであれば、遠く土地勘のない関西ではなく、東京周辺のネオンのある風景を撮ってみたい。ネオンの撮影でも、東京下町で続けてきた手法で東京の風景を捉えてみると、新しいものが見えてくるのではないか。

ネオンのことを知るようになったばかりにも拘らず、東京周辺の街からネオンが消えてしまう前に、自分が写真に残さねばならない。そんな即席で出来あがった使命感にかられ、私のネオン撮影ははじまった。