昭和には街頭で必ずみられた「ネオンサイン」。LEDの登場で、いまや国内では絶滅の危機にある。ところが、この数年、海外から日本のネオンサインを再評価する動きが相次いでいる。東京周辺でネオンのある風景を撮り続けている写真家の中村治さんは「これは単なるレトロブームではない」と指摘する――。
東京都福生市のダイニングバー、東京都大田区
筆者撮影
東京都福生市のダイニングバー、東京都大田区

街から懐かしいネオンが消え、新たなネオンが灯る

この2年間、私は東京周辺に点在する、ネオンのある風景を撮影して歩いた。LEDの普及によって、かつて日本中を彩ってきたネオン管を使う看板は、この15年で急速に消滅していると聞いたからだ。

撮影をはじめると、長年、街を照らしてきたネオンが消えていく一方、ここ数年でオープンした店舗の多くにネオンの看板が使われていた。その流れはコロナ禍でさらに加速していった。私は街から懐かしいネオンが消え、新たなネオンが灯る現象を目撃することになった。

今現在、店先にネオンサインを掲げる新しく開店した店舗が東京、関西を中心に、急増している。若者の街、渋谷の109や、PARCOを歩けば、多くの店でネオンやネオン風LEDを使った店名サインや装飾が店内を彩っているのを見ることが出来る。

ネオンブームのきっかけの一つに、韓国での「ニュートロ」と呼ばれるトレンドが日本に伝わったからとも言われている。ニュートロとは『NEW』と『RETRO』を組み合わせた造語で、『新しい懐かしさ』とでも訳すといいだろう。

単なるレトロブームではなく、かつてあったものを現代において新しく解釈し直すことで、多くの韓国の若者に受け入れられた。このブームの中、韓国では飲食店を中心にネオンを使う店舗が増え続けている。

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◆2021年12月21日、中村治氏によるネオンのガイドブック写真集『NEON NEON』(LITTLE MAN BOOKS)が発売。608ページ 2970円(税込)。

◆2021年12月21日(火)から26日(日)まで、外苑前Nine Galleryにて、中村治氏によるネオンの写真展『NEON NEON』が開催。詳細はギャラリーのウェブサイトをご覧ください。