3.ジェネレーションギャップ
「職場で起こっている最も深刻な問題の一つは、ジェネレーションギャップやジェンダーギャップに対する鈍感さである」
日本マイクロソフトの元業務執行役員で、現在は人材開発・組織開発の専門家として活躍する澤円氏は、日本の職場がギスギスする要因の一つをこう説明しています。
世代間の価値観のズレ、いわゆるジェネレーションギャップは年々大きくなっていると言えるでしょう。学校を卒業したばかりの20歳前後の若手と、再雇用の60歳を超えた高齢の社員が同じチームで一緒に仕事をするのが当たり前の景色になりました。
40代の部課長が、20代と50代、60代の部下をマネジメントするチームも珍しくなくなりつつあります。上司と部下、あるいはメンバー同士、物事の判断基準も、考え方も、心地の良い働き方やコミュニケーションスタイルも違って当然。それらのズレが職場の空気をぎこちなくする場合があります。
正しく対話し、正しく議論し、あるいは譲り合い和解ができるならギクシャクはしません。
しかし、現実にはなかなかそうはいかないでしょう。
にもかかわらず、ジェネレーションギャップに真摯に向き合おうとしない。あるいは、ともすれば今までのやり方や年長者の論理、あるいは同調圧力でもって押し切ろうとする。それでは、職場がさらにギスギスして当然です。
無力感とイライラを募らせる若手たち
とりわけ年功序列のカルチャーが色濃い組織においては、組織内の見えない引力や同調圧力により年長者の声が悪気なく大きくなりがちです。
大手製造業のある部署のお話をしましょう。今までの仕事のやり方を変えようと若手がITシステムの導入を提案したところ、多数派を占める50代の社員の猛反発を受けて頓挫したそうです。
彼ら曰く「定年まで安泰に過ごしたい。頼むから余計なことはしないでくれ」とのこと。
気持ちは分からなくもないですが、組織の未来の発展を考えるとその発言はいかがなものでしょう。こうして、「自分たちが逃げ切ることしか考えていない、昭和のおじさんたちだけにとって幸せなパラダイス」がぬくぬくと育ってゆくのです。
そのような組織に良い人材が集まるわけがありません。成長を諦めたベテラン社員、危機感のない(それでいて自分の倍近い年収をもらっている)年長者に囲まれて、未来ある若手は無力感とイライラを募らせるのです。しかし、年長者が主流の組織はジェネレーションギャップにすら気づかない。年長者が自分たちにとって居心地が良い会社に対して愛社精神を高める一方、若手は静かに退社精神を育んでいるのです。