コロナ禍で入社した新入社員たちには、どんな共通点があるのか。年間1000人以上の面談を行っている産業医の武神健之さんは「コロナ禍の新入社員には3つの共通点がある。なかでも“不完全燃焼気味”の社員が複数いたことには驚いた」という――。
リモートワークで働く若い女性
写真=iStock.com/west
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在宅勤務やハイブリッド勤務が“普通”の新入社員たち

コロナ禍2回目の年末年始を迎えます。

私は産業医として、2021年も1000人以上の働く人と面談をしてきました。コロナ禍でリモート勤務が普及したため、従来のような対面での産業医面談は少なく、ZoomやTeams、電話等でのバーチャル面談が“普通”です。

私を含めコロナ前から働いていた人にとっては、コロナ禍で始まった在宅勤務やミックス(ハイブリッド)勤務は“新しい”働き方であり、今年になりようやく慣れてきた印象ですが、コロナ禍の新入社員等にはそれが初めから”普通”なことでした。

その結果、コロナ禍の新入社員には3つの共通点があると産業医面談で感じたことをお話したいと思います。

「もっと仕事したい」不完全燃焼気味の1年目

1つめは、コロナ禍で新社会人生活が始まり、不完全燃焼な1年目を過ごしている新入社員がそれなりにいるということです。

実はコロナ禍の新入社員たちとの面談で多かった相談は、決して、仕事量が多すぎて大変だとか、先輩たちが優しくないなど、ネガティブな内容ではありませんでした。むしろ、社会人1年目としてやる気満々な気持ちが、コロナ禍のため期待していたように満たされないという内容が多かったです。

私のクライエントに入社してくる新社会人たちは、やる気に満ち溢れ仕事に前向き姿勢な社員が多いです。しかし、コロナ禍で在宅勤務やハイブリッド勤務となり、思うように仕事に没頭できず、「もっと仕事したい」、「出社したほうがいろいろ学べるしやりやすい」と、不完全燃焼気味の社員が複数いたことは、私には想定外でした。

コロナ1年目(2020年4月)に入社したA君が産業医面談にきたのは2年目になってからでした。仕事で苦手な領域があるが、先輩たちはそのことを知らず、普通に苦手な仕事も任せてくる。1年目ならばわからないと言えるが、今はもう後輩もいる立場なのでそれも言えず、また、こっそり聞くことができるほど仲のいい先輩もおらず、どうしてもこの苦手領域が克服できない。その仕事に取り組む前日は眠りが明らかにおかしいとの相談でした。ちなみに、全般的に仕事は好きで、この領域以外は全て楽しく取り組めているとのことでした。

在宅勤務の時期に学んだ領域が苦手なまま

よくよく聞いてみると、A君の部署では入社1年目は数カ月ごとに部内のチームをローテーションするのですが、その苦手領域は昨年の緊急事態宣言で在宅勤務になってしまった時期のローテーションだったとのことでした。仕事を覚えたくても、出社さえてもらえず、また、ちょっと先輩に確認したいことやわからないことがあった時、在宅勤務だと気軽に先輩に相談できなかった(から仕事がそこで止まってしまった)。このチームにいたときは飲み会もなく、先輩たちとも打ち解けることができなかったうんぬん……。A君としては、不完全燃焼となってしまったことが、今も尾を引いていると感じるとのことでした。

このように、社会人になるにあたって持っていた期待やエネルギーが不完全燃焼……。そんな声が多いのが印象的でした。時にそれは後を引く人もいるようです。アフターコロナの時代が来れば、きっともっと仕事に(遊びにも)満足できる状況になるはずです。その時まで、頑張ってほしいと思います。