ワーママ社員が増えて環境を整備
【白河】2017年というとまだコロナ禍前で、リモートワークの制度がある企業も少なかったかと思います。制度はあっても有効に活用できている企業はなかったでしょうね。早くから先進的な取り組みをされていたのですね。
【小川】当初は、子育て中の女性社員に、時間と場所の制約がある中でも力を発揮してもらえるようにと導入したのですが、後にこれは男性の働きやすさや組織全体の生産性を上げることにもつながっていると気づきました。今では、男女の別なく組織として強くなるために必要な環境だと思っています。
【白河】御社の働き方に対して顧客の反応はどうでしたか? 子育て中の女性が多く、リモートワークが中心で長時間労働はしないとなると、抵抗を感じる顧客もいるのかなと思いますが。
【小川】脱下請け宣言以来、当社はこの新しい働き方で、「ノキオスタイル」で浜松を引っ張っていくんだと積極的に発信しています。そのために失った仕事もありましたが、このスタイルに共感するお客様は残ってくださいました。ですから、子育て中など社員それぞれの事情も尊重していただけていますね。今も自社サービス事業と並行して受託開発も行っていますが、大手企業の下請け業務はほとんどありません。お客様は地元の中小企業が中心で、下請けではなく共創パートナーとして共に歩むことができています。
組織文化を変えるには5年はかかる
【白河】ホワイト企業同士のネットワークができているのですね。志を同じくする企業が仕事をくれて、それがまた自社の働き方を向上させるという好循環に入っているのだなと感じました。以前の悪循環を脱却できたと感じたのはいつ頃ですか?
【小川】実感できるようになったのは、脱下請け宣言の5年後ぐらいです。やはり一度組織文化をつくってしまうと、変えるのに5年はかかるなと思いました。この間、自分の経営力の足りなさを痛感して、グロービス経営大学院で学び直したこともありました。ここで多様な価値観やネットワークに触れたことで、経営者として長期的な視点を持てるようになったと感じています。
【白河】その5年の間に、中心事業を下請けから自社サービスへ転換し、それによって優秀な女性人材が増え、彼女たちに対応するため働き方を変えたところ、さらに力を発揮してくれるようになったわけですね。