では、この違いがどこからくるのか、実際のフューチャーセンターでの活動を見ていくことで、考えていきたいと思います。
まず、フューチャーセンターらしい典型的な活動として知られているのは、「未来シナリオづくり」です。未来シナリオは、長期計画とは異なります。どちらかというとリスクマネジメントのリスク予測に近いと思ってください。長期的にどんな不確定要素があるのか、ということを調査していきます。
例えばですが、大国の金融破綻、大災害、テロ、パンデミックといった最も大きなグローバルな不確実性のレベルから、自国の成長戦略、環境問題への対応、移民政策、税制改革などの国家戦略レベル。そして、市場や産業の変化、業界内のルールの変化、もっとミクロには、社員の価値観の変化など。様々なレベルでの不確実性を理解しています。その上で、すべての不確実な心配事が起きるかもしれないと仮定して、すべてに対応可能な次の一手を考えていきます。
オランダでは、政府の干渉を受けない(真の)シンクタンクが、本気の未来シナリオを作ります。何が本気かというと、何の落としどころもないニュートラルな立場で、できる限りの叡智を結集して未来を描くのです。もし一つの未来ビジョンを描くのであれば、そこには「なんらかの主張」が必要になるでしょう。ですが、「起こり得る未来」をすべて明らかにしようというアプローチは、そこに客観性を持たせることができるのです。
分かりやすくするために、ちょっと極端な例を挙げたいと思います。たとえば「ゼロックスの未来は、やっぱりコピーなのか?」という二者択一の問いがあったとします。未来ビジョンのアプローチだと、「コピーではない。ナレッジサービスが置き換わる」という主張が出てくることになり、「そう思う」「そう思わない」という議論が生まれてきます。一方、未来シナリオのアプローチですと、様々な兆しのすべてに耳を傾け、「ゼロックスが未来もコピーを提供している」「ゼロックスの未来は広告事業」「ゼロックスの未来がナレッジサービス」と、あらゆる可能性を検討していきます。事前に主張を空中戦でぶつけ合うのではなく、あらゆる可能性をしっかりと可視化した上で、「何が起こるとどのシナリオに転ぶのだろうか?」と対話を進める材料にしていきます。