“第4のメガバンク”実現へついに動き出す

12月11日、SBIホールディングスとSBI地銀ホールディングス(以下SBI)は、新生銀行に対して実施した株式公開買い付け(TOB)が成立したと発表した。TOBで議決権比率は47.77%に達し、SBIは新生銀行を連結子会社化する。

北尾吉孝(きたお・よしたか)SBIホールディングス代表取締役社長(=2021年1月29日、決算説明会。東京都港区)
北尾吉孝(きたお・よしたか)SBIホールディングス代表取締役社長(=2021年1月29日、決算説明会。東京都港区)写真=時事通信フォト

今回のTOBは、基本的にSBIが“第4のメガバンク”を目指す重要な取り組みとみられる。SBIは地方銀行8行と戦略的資本・業務提携を結び、金融商品ラインナップの拡充などを進めている。SBIは、そこに新生銀行の消費者金融や有価証券関連のビジネスを結び付けることで収益を拡大し、大手メガバンク3行に伍する金融ビジネスの確立を狙っているのだろう。各地方銀行と新生銀行の協業が加速すれば、SBIの銀行ビジネスは相応の成果を上げることができそうだ。

ただ、そこにリスクがあることは忘れてはならない。特に、わが国の超低金利環境は長期化する可能性が高い。それによって提携する地方銀行の経営体力が低下し、期待したほど収益力が上向かない展開も想定される。早期の成果実現に向けてSBIがどのように銀行ビジネスの効率性向上に取り組むかが注目される。SBIの取り組み次第では、銀行業界での再編が加速する展開もあるかもしれない。

政府の「買収防衛策反対」が決定打に

SBIによるTOB成立に決定的な影響を与えたのは、政府(金融庁や新生銀行の株式を保有する預金保険機構など)が、新生銀行が成立を目指した買収防衛策に賛成しなかったことだ。

これまでの経緯を簡単に振り返ると、9月上旬にSBIは新生銀行に対するTOBを発表した。10月に入ると、新生銀行はTOBに条件付きで反対すると正式に発表し、11月下旬に臨時の株主総会を開催して買収防衛策の発動をめざした。その時点で、SBIによるTOBは敵対的なものに発展した。また、新生銀行は買収者から自行を助けてくれる“白馬の騎士(ホワイトナイト、友好的な買収者を指す)”の獲得も目指したが、ホワイトナイトは現れなかった。

11月に入ると状況は大きく変わった。新生銀行の株式の約2割を保有する政府が買収防衛策の発動に賛成しない方針を固めたのだ。その結果、新生銀行は買収防衛策を撤回し、SBIによるTOBが成立するに至った。