とはいえ日本では、2022年4月に従来の固定価格買取制度(FIT)に代わってフィードインプレミアム制度(FIP)が導入される。

事業者のコスト意識を高めることが目的だが、この制度の下で事業者の再エネ拡充インセンティブがどれだけ刺激されるかは未知数。蓄電装置の開発など出力の不安定さをカバーする取り組みも不可欠だろう。

再エネ普及のスピードより重要なものがある

またスペインの場合、ピレネー山脈を隔てた原発大国フランスから電力を輸入することができる。もちろん、これはフランスと国境を接した地域に限定される話だが、それでも国内で不足する電力を輸入という形ある程度はカバーできる仕組みが備わっているわけだ。

残念ながら、島国である日本にはそうしたセーフティーネットは存在しない。

再エネの拡充を目指すことは確かに脱炭素化にかなうことだろう。とはいえ、その不安定性に鑑みれば、再エネの拡充は天然ガスや原子力など他の電源との兼ね合いの上で戦略的に進める必要があることは明白である。

ドイツやスペインなどの大陸ヨーロッパの国と異なり、日本は電力を輸入することが不可能だということを忘れてはならない。

燃料タンクを積んだ大型船の建造
写真=iStock.com/kokouu
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一部には日本のエネルギー計画を手緩てぬるいと批判する声もあるだろうが、日本は日本として、他国にはない特有の課題を持っている。

エネルギー政策の在り方は、経済の根幹に関わる問題だ。他国の動向に比べて再エネの普及のスピードが遅いからといって、一概に批判されるべきものではない。急がば回れ、という格言をみ締めたいところである。

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