それに、再エネ100%の実現は、裏を返すと脱原発と裏腹の関係にある。スペインの原発は今後、40~50年とされる耐用期限を順次迎えることになる。
サンチェス政権は2035年までに現在稼働している7基の原発をこのタイミングで閉鎖しようとしてきたが、今年の電力危機でこの戦略は見直しを余儀なくされたと言わざるを得ない。
そもそもスペイン政府は、今年5月、国際エネルギー機関(IEA)より脱原発を急ぐべきではないという勧告を受けていた。
IEAはスペインに対して、過渡期の電源として現在稼働している原発の存続を図り、段階的にカーボンニュートラルを図るべきだと釘を刺したわけだが、今振り返れば極めて的を射た勧告だったと言えるだろう。
選挙次第でスペインも脱・脱原発に転換か
それでもスペインは脱原発にこだわり続けるのだろうか。それは真に、次期の総選挙の結果にかかっている。
任期満了に伴う総選挙は2023年12月とまだ間があるとはいえ、それ以前に解散総選挙が行われる可能性は十分にある。足元、サンチェス首相率いる与党社会労働党(PSOE)の支持率はライバルの国民党(PP)と拮抗している。
サンチェス政権は、中道左派のPSOEと極左政党であるウニダス・ポデモス(UP)との左派連立政権だ。中道右派であるPPが次期総選挙で勝利した場合、極右政党のVOXと右派連立を組む公算が大きい。
PPとVOXの右派連立政権が成立した場合、産業界寄りの立場を取るため、スペインが脱・脱原発に舵を切ることになるだろう。
スペインの経験は日本にとっても参考になる話だ。
COP26に合わせて経産省が発表した「第6次エネルギー計画」で、日本は2030年度の電源構成に占める再エネの割合を36~38%と従来の目標(22~24%)から大幅に引き上げた。19年度時点で再エネの割合は18%であったから、この10年でその倍を目指すという目標である。