「門地による差別」で憲法違反に
では②はどうか。
こちらはより一層、無理筋だろう。何しろ、戸籍に登録される国民の中から、特定の血筋の者(皇統に属する男系の男子)だけが、養子縁組によって皇族の身分を取得できるという、特別待遇を与えられることになるからだ。憲法の国民平等の原則に反すると言わねばならない。
憲法14条1項に以下のような規定がある。
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」
この条文に照らすと、②は国民の中の「皇統に属する男系の男子」のみに養子縁組を認め、それ以外の国民には認めないという、「門地(家柄・家格)による差別」に該当するだろう。
このことは、同会議のヒアリングに応じた憲法学者で東大大学院教授の宍戸常寿氏が、既に指摘しておられた(令和3年5月10日)。
「法律(皇室典範や特例法)等で、養子たりうる資格を皇統に属する(皇族でない)男系男子に限定するならば……一般国民の中で門地による差別に該当するおそれがある」と。
養子縁組は現実的なのか
同会議でも、この問題は自覚されているようだ。役人らしい婉曲的な表現ながら、事務局の「調査・研究」には次のような記述が見られる。
「法律の明文で規定する以上は、養子となり得る者として規定される国民と他の国民との間の平等感の問題はあるのではないか」
それを回避するために、恒久措置はあえて執らず、「個別の養子縁組の機会を捉えて養子縁組を可能とする立法を行う」という苦肉の策も、選択肢の1つに挙げている。「あくまで養子縁組を行う意思の合致した特定の当事者のみが対象となることから、国民の間における平等感の問題は生じないのではないか」というのだ。
しかし、仮に「特定の当事者」の間で「養子縁組を行う意思が合致した」としても、養子にする相手が「皇統に属する男系の男子」でない場合はどうするか。あらかじめ「皇統……」という限定を設けるなら、やはり(「平等感」という主観の問題ではなく)客観的に「門地による差別」に該当すると言う他ない。
しかし、逆にその限定を設けなければ、「皇統」に属さない任意の人物(「男子」に限定すれば“国民”の間での扱いである以上、それも「性別による差別」に当たる)が養子縁組によって皇族の身分を取得できる制度になってしまう。
さらに、法律に欠かせない「一般性」(不特定多数の人に対して、不特定多数の事案に適用される)の観点からも、個別の養子縁組のためだけの立法措置は認めがたいだろう。
そもそも、養子縁組に応じる宮家や国民男性を期待できるか、という問題もある。