陽気なフィンランド人でも人の靴を見て話をする
2019年の世界幸福度報告の調査では、156カ国の人たちに、自分の現在の生活を10点満点で評価してもらっている。0が最悪で最高は10だ。フィンランド人はこの評価の平均スコアが世界で最高だった。
この結果はまったく驚きではない。フィンランドの社会には他の国に比べて、生活の満足度を高める上で大切な要素が揃っているからだ。まず、日々の食べ物を得るのに苦労することはまったくない。社会サービスは充実している。政治的な抑圧はない。そして、政府への信頼度も高い。
ただし、幸福というのは、生活に満足すれば得られるものではない。幸福というのはあくまで感情だからだ。生活への満足度ではなく、国民の持つ感情で幸福度を計ると、ランキングの様相は一変する。そのランキングでは、パラグアイ、グアテマラ、コスタリカという国々が上位に入る。フィンランドはトップから遠い位置にまで下がってしまう。
ただ、この結果もさほど驚きではない。なにしろフィンランド人というのは、つつましく控えめで、感情をあまり表に出さないことで有名だからだ。内気なフィンランド人は人の靴を見て話をするが、陽気なフィンランド人もやはり人の靴を見て話をする、という古いジョークがあるほどだ。
生活満足度が高いフィンランドのうつ病罹患率は世界トップレベル
また各国のうつ病の罹患率を調べると事態はさらに複雑になる。たとえば、人口1人あたりの単極性うつ病の罹患者数を比べると、アメリカとフィンランドが共にトップ近くにランキングされることがある。
もちろん、どの調査も完全ではないので、直ちに正しい判断ができるわけではない。時には、フィンランドのうつ病罹患がヨーロッパの平均程度と評価される場合もある。
だが、うつ病対策という点では、フィンランドが世界の中で特に優秀と言えないことだけは明らかだろう。矛盾するようだが、生活への満足度が非常に高いまさにその国で、多くの人がうつ病になっているのである。