日本人の多くは台湾が中国からの「独立」を求めていると思っているのではないだろうか。フリーライターの神田桂一さんは「独立とは何かに帰属していたものが自立することを意味する。中国に帰属しているわけではない台湾が求めているのは『建国』だ」という――。

※本稿は、神田桂一『台湾対抗文化紀行』(晶文社)の一部を再編集したものです。

台湾と中国の国旗
写真=iStock.com/Oleksii Liskonih
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同性婚を合法化できる台湾のアイデンティティ

「2019年5月17日、台湾で、アジア初となる同性婚を認める特別法が、立法院で可決された」

ブラウザを開くと、ニュースが流れてきた。なぜ、台湾は、こういうことをいち早く行うことができるのか。それは、台湾の複雑な政治や国際関係事情によるところが大きいのではないか。台湾は、常に戦っていなければならない。そのことと関係しているのではないだろうか。

台湾人の、そのよって立つアイデンティティは何なのか。政治について、国際関係について、どう考えているのか。それを聞き出すべく、一週間後、僕は、台湾に飛び立った。

5月下旬の台湾は、蒸し暑く、雨が降っていた。LCCを使っていつもの桃園国際空港に降り立ち、いつもの台北站行きのバスに乗る。晴れている台湾しか知らないので、どこか違和感がある。それは僕の心と微妙にシンクロして、より一層僕を不安にさせた。今回は、台湾人の友人、dodoに久しぶりに会って、台湾のアイデンティティの問題を取材するつもりで来た。

常日頃から仲良くしている友人だけど、いざ、政治の話や、アイデンティティの話をじっくり聞くとなると、本当にちゃんと腹を割って話してくれるのか、僕のことをそこまで信用してくれているのか、不安で仕方がなくなる。

僕は、事前にこのようなことを聞きたいということを話していない。ぶっつけ本番で聞くつもりでいた。なんとなく、事前に伝えておくことは、友人としてあるべき態度じゃない気がしたからだ。いろいろ話を聞かせて、くらいにとどめておいた。バスは、曇り空に変わった台北の空の下、台北站に着き、そこから西門シーメン站近くのホテルにタクシーで移動して、ホテルの部屋で、質問事項を練って、翌日に備えてその日は就寝した。