ユーロの混乱は、いよいよクリティカルな局面に突入してきた。ユーロ消滅間近かとさえ思える状況だ。ドイツ国債を含めユーロ圏総格下げの様相を呈していることは大いに注目すべきである。欧州経済の本丸はドイツ。ここに火がつき始めている。ユーロを支えに入ったところを信用不安のタネにされてしまうという、まさに「ミイラ取りがミイラ」になる状態をわれわれはリアルタイムに目撃しているのだ。
ユーロは立て直し可能なのか。12月8、9日に開催された欧州首脳会議では、財政赤字が3%を超えると自動で制裁を発動させるなどの財政規律強化を盛り込んだ財政協定で合意に達した。しかし欧州共同債は棚上げ、欧州金融安定基金(EFSF)の拡充も先送りされた。いずれも、もともとうまくいくはずのない構想だったが、棚上げは求心力低下の一段の表れだ。ドイツの七光りで、これからどこまで求心力を維持できるか。命運危ういユーロ圏だ。
今日の世界経済では収斂の力学が働かない。分散、多様化の時代であり、通貨も無極化が進んでいる。ユーロの混迷がそれを如実に示している。
翻って米国はどうか。目先の経済見通しは悪くないが、政府や家計が抱える債務バランスの悪さはまったく是正されていない。喉元すぎれば熱さを忘れる。今の緩和姿勢が続けば、再び金融の暴走が始まるだろう。どこかで不均衡を是正しなければリーマンショックを上回る恐慌を引き起こしかねない。
その点、日本は違う。全部門赤字の米国に対し、日本は政府部門が巨大赤字部門であるにもかかわらず、民間部門を含めた経済全体としては最大の債権大国だ。これは驚くべき快挙だ。ただ、雇用の空洞化に伴う痛みには、しかるべき対応をする必要がある。そこが成熟経済社会の知恵のみせどころだ。
当面は所得収支の黒字が経常黒字を支える。それが成熟経済だ。企業の海外移転にも損益分岐点がある。タイの大洪水で行きすぎた海外移転が誤りであると悟った企業は少なくないはずだ。
隠れ基軸通貨・円の地位は当面揺るぎそうもない。ただ、人口減少の中でどこまでこのポジションを維持できるかは問題。これが次の注目点だ。いずれにせよ、2012年は、一寸先は闇の「その日暮らし経済」になる。