人と車が一体となって事故を遠ざける
現時点、日本市場に導入される新型Cクラスのパワーユニットは2種類。直列4気筒1.5lターボエンジン(204PS/300N・m)+ISGと、直列4気筒2.0lディーゼルターボ(200PS/440N・m)+ISGだ。
ISG(Integrated Starter-Generator)とは、48V電源システムによるマイルドハイブリッド機構のこと。エンジンに直結した電動モーター(20PS/21.2kgf・m)によって走行中の動力アシストを行うほか、減速時はジェネレーターとして機能し、運動エネルギーを回生して車載のリチウムイオンバッテリーに蓄える。
ステアリング操作に合わせて後輪を最大で2.5度操舵させるリア・アクスルステアリングもSクラス譲りだ(Sクラスは4.5度操舵する)。リア・アクスルステアリングは、小回り性能を向上させたり、カーブ走行時の安定性を高めたりする。
試乗してみると、確かに小回り性能が高く、最小回転半径は5.0mとトヨタ「アクア」、ホンダ「フィット」などコンパクトカー並みだから不慣れな道でも運転しやすい。また、山道では専用設定のステアリングギヤ比を合わせてスポーツモデルのような鋭いハンドリングが体感できる。
さらにリア・アクスルステアリングでは、万が一の際、ドライバーの緊急回避操作に遅れなくボディが反応することから、回避率を高める働きもある。人と車が一体となって事故を遠ざける……、こうした思想はまさにメルセデス・ベンツが大切にしてきた領域だ。
「これはもう、Cクラスの価格帯とは言えないのではないか」
もっとも、Cクラスの価格帯はSクラスの約半分なので同じ名称であっても技術は細部で異なるが、新型Cクラスの走行性能や安全思想にはSクラスのエッセンスが十分に感じられる。
しかし、歴代Cクラスオーナーの一人として新型Cクラスに対して手放しで喜べない部分もある。それは価格だ。
先に解説したリア・アクスルステアリング機構はセットオプションとなることから、車両本体価格である651万円(購入時期によっては654万円)に47万1000円が上乗せされ、さらに、メルセデス・ベンツが推奨する装備を加えた総額は720万円を超えてくる(取材した試乗車の場合)。
エンジンや装備が異なるため単純比較はできないが、それでも従来型の5代目Cクラスから車両本体価格は200万円ほど高くなった。これはもう、Cクラスの価格帯とは言えないのではないか。
「オプション装備を選ばなければ良い」という話もあるが、新型Cクラスをメルセデス・ベンツらしく乗りこなすには、やはり追加装備は不可欠だ。とくに安全性能に直結する装備は譲れない。