一方、新日本監査法人について第三者委員会は同じように報告書のなかで、「(ジャイラスの)配当優先株を買い取った際の会計処理に関し、会計上問題のある報酬ののれん計上を容認した点に関し、同監査法人が監査人に就任して間がなく、過去の経緯についての知識が不足していたことを考えても、問題なしとしない」としている。
要は、配当優先株関連の取引が実質的にファイナンシャル・アドバイザーへの報酬だったにもかかわらず、「のれん」に組み込んだことを問題視しているのだ。そもそも、のれんは“将来への期待”など資産の内容が明確でないものを計上する科目。報酬なら、「アドバイザリー費用」など費用計上するのが筋である。
会社はこれに関する412億円など巨額の費用計上で株主から疑問を持たれるのを恐れ、のれんに紛れ込ませて時期をずらし、減損処理で片付けようとしたのだろうか。新日本監査法人もファイナンシャル・アドバイザーの報酬だったことを認識していたと指摘されており、監査人としてのれん計上を認めたことの責任を問われても仕方がないところである。
また、第三者委員会は人事ローテーションが機能していなかったことも問題視している。同一人物が長年財務を担当していると、不正の温床になる恐れが高まる。それは、ベテラン経理担当者による使い込みが後を絶たないことからもわかる。そうした不正はたいていの場合、異動をきっかけに発覚するもの。人事ローテーションは一番簡単な内部統制なのだ。
その意味で、あずさ監査法人から新日本監査法人に代わったときが、この問題をあぶり出す大きなチャンスだったのかもしれない。もし、双方に「問題なしでスムーズに引き継ごう」という意識があったとしたら残念なことであり、改めて監査人としての役割を問い直したい。
※すべて雑誌掲載当時