【東】それは荒らし対策にもなるんです。荒らしとまでいかなくても、ちょっと失礼だなと思うコメントがくることがある。そこで、配信者の側がしっかりと「そういうコメントは番組を壊しちゃうんで気をつけてください」と指摘することで、ユーザーのリテラシーが向上するということもある。むろん、逆もあります。

発信者もユーザーも一緒に育っていくことが大切なんですね。新しく参加した配信者やユーザーが「あ、ここではコメントはこう使うんだな」と空気を読むことで、良質なコメントが増えていくという好循環が生まれています。

【辻田】先日、文筆家の古谷経衡さんが私の番組に出てくれたのですが、古谷さんはこれまでコメントをぜんぜん読まなかった、というんですね。YouTubeなどはコメントが荒れるからでしょう。

コメントが荒れると、結局は発信者が見ない方向へ進んでしまう。ただ文字が流れるだけで、フィードバックにならない。それでは、意味がありません。

古谷さんは、うちの番組ではコメントを読んでくれて、感動していましたね。「こんなに応援してくれるなら読もうかな」って。

哲学者の東浩紀さんと近現代史研究者の辻田真佐憲さん
撮影=西田香織

中間集団がいるから思い切って発言できる

【東】コメントの質が高いという理由で、配信者でも視聴者でも新規参入してくれる人は増えています。それぐらい他のサービスのコメントで苦しんでいる人たちがいるということかもしれません。じっさい、YouTubeより影響力は1ケタ、2ケタ落ちるかもしれないけれど、代わりに心の安定は手に入りますね(笑)

また、ふしぎなことに、シラスでコミュニティをつくると、YouTubeでもコメントは荒れにくくなるんです。先日辻田さん、社会学者の西田亮介さん、ぼくが出演したYouTube番組を放送し、10万回ほど再生されましたけど、コメント欄はあまり荒れなかったんですね。シラスのユーザーがベースの空気をつくってくれたからかな、と思います。

【辻田】発信者と不特定多数の視聴者がいる間で、シラスユーザーが中間集団になってくれるんですね。だから、過去の発言を前提としたぶっちゃけ話もできる。

だれだって本当は炎上対策など考えないで、これまでの議論を前提にスパッと物事の本質を言い当てたいんです。中間集団がいてくれると思い切って発言できるし、仮に炎上しても、その人たちは絶対にいなくならない。