少女漫画によく登場する「切ない表情」

次は「漫画表現」の共通点について見ていきましょう。少女漫画独特の表現方法として、「切ない顔(表情)の演出」というものがあります。少女漫画を描いていた私自身の経験から言わせてもらうと、女性はこの「切ない顔(表情)」が大好きです。

たとえば『鬼滅の刃』には「錆兎」という男性キャラクターが登場します。彼は炭治郎の兄弟子にあたるのですが、すでに鬼に殺されていて、炭治郎の前には幽霊として姿を現しました。この錆兎というキャラクターは女性からの人気も高いのですが、その理由のひとつに、彼が見せる「切ない表情」があります。

錆兎が「切ない表情」を見せるのは、炭治郎が剣の修行をしていたときです。錆兎は、厳しい試練に挫けそうだった炭治郎の前に現れ、彼の修行を手助けします。そして炭治郎が試練を乗り越えたとき、錆兎は〈泣きそうな 嬉しそうな〉切ない表情を浮かべるのでした。

優しさを印象付けた炭治郎の表情

炭治郎もまた、この「切ない表情」を見せます。コミックス第2巻、炭治郎との戦いに敗れて首を切り落とされた鬼が、間もなく死を迎えようとしていたときです。

倒された鬼は〈どうせアイツも汚いものを見るような目をするんだろう 蔑んだ目で俺を見るんだ くそっ 目を閉じるのは怖い でも首の向きを変えられない 最後に見るのが鬼狩りの顔だなんて――〉とグチグチと恨み言を述べながら炭治郎を見上げようとします。

すると、そこには切ない表情を浮かべた炭治郎が立っていました。炭治郎の切ない顔を見た鬼は、「自分が人間だった頃のこと」「慕っていた兄を咬み殺してしまったこと」を思い出します。

鬼は泣きながら炭治郎へと手を差し伸べました。炭治郎はその手をぎゅっと握り、〈悲しい匂い……〉〈神様どうか この人が今度生まれてくる時は 鬼になんてなりませんように〉と祈りを捧げます。そうして鬼は消滅するのですが、こうした「切ない表情の演出」は少女漫画特有の手法です。