AIにも勝るとも言われる「将棋脳」はいかにして構築されたのか。藤井聡太四冠の幼少期や藤井家の教育方針を知る関係者を、今夏、プレジデントFamily編集部は取材した。今回は、祖母に買い与えられたスイス製の木製玩具を藤井少年がどのように遊んでいたかを報告しよう――。

※本稿は、プレジデントFamilyムック『藤井聡太 天才の育て方』の記事の一部を再編集したものです(肩書は取材当時のものです)。

3歳の藤井三冠が作ったキュボロの作品。写真を基に藤田さんが再現。最上部からビー玉を落とすと、内側を通って手前の通路を通り、手前右奥に玉が落ちるという作りになっている。
藤井三冠が3歳の時に作ったキュボロの作品。写真を基に藤田さんが再現。最上部からビー玉を落とすと、内側を通って手前の通路を通り、手前右奥に玉が落ちるという作りになっている。(写真提供=木のおもちゃカルテット

脳を育てるスイス製の玩具

藤井聡太三冠が幼少期に遊び親しんだ「キュボロ」というスイス製の知育玩具がある。

藤井三冠が使っていた、とテレビ番組などで紹介されてから、全国的に品薄状態が続いた。どのような玩具なのか。キュボロに詳しい日本知育玩具協会代表理事・藤田篤さんは次のように語る。

「溝や穴があるキューブ状のブロックを組み合わせてビー玉の通り道を作り、上からビー玉を転がして、途中で詰まることなく下まで転がったら成功という玩具です。ビー玉の動きをイメージして、見えない部分でビー玉がどう進むか、トンネルがとぎれていないかを頭の中で思い描けないと、うまくビー玉が転がりません」

藤井三冠が3歳のころに作り上げたという作品を藤田さんに再現してもらった。

「彼が作ったルートを組んでみてわかったのは、パーツをすべて無駄なく使っているということです。特にビー玉の動きが外から見えないトンネルを多用していて、玉の軌道をイメージする空間認知能力が高いと感じました」

キュボロは昔からある積み木遊びの一種で、電源を入れるとすぐに楽しめるといったような、今風のわかりやすい玩具ではない。自分で考え、失敗しながら徐々に上達していくことで楽しさが少しずつわかるようになるのが特徴だ。

「まず、ブロックを積み上げて玉が転がるルートを作り、上からビー玉を落としてみる。もしも玉がゴールから出てこなければ、ブロックの配置を変えてルートを組み直すという仮説検証作業を繰り返す玩具です。ゴールからちゃんと玉が出るまで、じっくり考えるプロセスが、子供に思考力や考える喜びを教えてくれます。一度楽しさがわかると、子供たちはもっと難しいルート、複雑なルートを作ることにチャレンジするようになります」

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