※本稿は、野地秩嘉「「次につぶれるのはトヨタだ」|『トヨタ物語』続編連載にあたって 第1回」(note)の一部を再編集したものです。完全版はこちら。
「自動車製造」から3年で大変化
わたしが2018年1月に出した『トヨタ物語』の末尾の1行は次の通りだ。
「自動車製造はまったく夢のような仕事じゃないか」
確かに、その時点でトヨタは「自動車製造の会社」だった。
ところが、ほぼ3年の間に、トヨタは大きく変わった。自動車を作っていることは作っているけれど、いわゆる車を作るだけのメーカーではなくなった。
まず、車は次々とコネクティッドカーになっている。いわば走る通信機械だ。車が故障したり、調子が悪くなっても、通信サポートサービスを提供する関連会社「トヨタコネクティッド」のセンターから車の状態が診断できるようになっているし、カーナビなどソフトのアップデートも自動更新だ。
この場合、ドライバーはトヨタコネクティッドに通信料を払っている。この売り上げは製造業ではなく、サービス業としてのそれだ。
また、物流を見ると、部品を調達する物流、完成車の物流、サービスパーツの物流のいずれもがトヨタ生産方式のノーハウを生かして効率化された。物流革命とも言えるもので、ヤマト運輸、佐川急便の売り上げの何割かに相当するような巨額の原価低減となっている。
商品である車を売ることも大事だが、原価を低減すれば利益は増える。物流の大きな原価低減ができたのは、やはりサービス業としての自覚があるからだろう。
ライドシェアもコロナ禍で下火に
そして、販売である。新型コロナウイルスの蔓延もあり、世界的に車の売れ行きは見通すことはできない。
この間、販売に関する環境は大きく変わった。たとえば、新型コロナウイルス以前、車は自己所有からライドシェアへ変わるとされていた。ウーバー、グラブといったシェアビジネスの会社が時代の先端を走っていたのである。
ところが、状況は一変した。感染症を恐れることから、ライドシェアでも相乗りサービスがなくなった。今後も、感染症の脅威は続くから、相乗りサービスは復活しないだろう。そして、残ったシェアサービスにしても、これまでのように成長するかどうかは疑わしい。