コロナ禍が持ち味を直撃
この「日高屋」の持ち味をコロナ禍が直撃した。営業時間、酒類提供等については政府・自治体の要請に従って営業を行っている。ちなみに営業外収益に計上した時短要請協力金は21億1900万円となっている(21年8月末までに入金されたもの)。
酒類販売比率を見ると、コロナ禍前の19年2月期16.7%、20年2月期16.6%と数値は安定しているが、コロナ禍で時短要請があった21年2月期は14.3%となった。それが、21年3月11.7%、4月10.6%、5月1.2%、6月4.4%、7月7.2%、8月0.2%となった。
また、おつまみの対売上比率も減少した。20年2月期のおつまみの対売上比率は8.8%、21年2月期は8.3%だったのに対し、21年の8月と9月は約3.0%となった。時短営業と酒類の販売を休止したことは客単価を押し下げることになった。
さて、同社の特徴と21年3~8月の業績の動向を照らし合わせると以下のようになる。また、それによって被ったコロナ禍のデメリットを克服するための一般的な対策を挙げた。
・総店舗数445店舗(21年8月末)に対し1都3県が441店舗、総店舗数の99%とこのエリアに店舗が集中している。コロナ禍で1都3県に緊急事態宣言が断続的に発出されたためにほとんどの店舗で影響を受けた。これらを回避するためには、展開エリアを分散化する必要がある。
・通常時の酒類販売比率が17%弱となっているが、時短営業によって酒類が売れる時間帯が短くなり、また酒類の販売を休止したことでこの売り上げがなくなった。これらを回避するためには、酒類販売に依存しない業態を開発する必要がある。
テイクアウトの力をつける
コロナ禍の飲食業界はKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)やマクドナルドといったテイクアウトに強い業態が“特需”のように業績を伸ばした。それに倣って、これまでテイクアウトに力を入れていなかったテーブルサービスの業態がテイクアウトやデリバリーに参入するようになった。
「日高屋」でも21年3~8月をこのような飲食業のトレンドに沿う形で歩んできた。テイクアウトでは“できたてアツアツのお弁当をお手頃価格で”とうたい「日高弁当」を500円(税込、以下同)、580円、600円等でラインアップした。また、店内で得意とする「おつまみ」をセットにして590円で販売した。これらは着実に実力をつけていき、直近8月には月間売上2億円、全店売上の13%を占めるようになった。また、全店の4分の3に相当する約340店舗で出前館によるデリバリーが実施できるようになった。
新商品・期間限定メニューはリピーター・新規客ともに注目を集めた。夏季に販売した「冷麺」640円は食べ応えがあり、現在も継続している「天津丼」530円は、ライバルである餃子の王将の類似商品群の528円にぶつけて、消費者の選択肢を広げている。