キーボード入力より手書きが、記憶への定着率を爆上げする

最近では、ノートやメモをパソコンやスマホでとるという方も多いことでしょう。

レポートや提出用資料をパソコンでつくるよう求められる時代ですから、当然といえば当然の流れかもしれません。しかし、記憶の定着効果を見れば、手書きのメモやノートの力は見過ごせないものがある──と考えるのが、今のところは主流です。

ノートにメモを取るビジネスマン
写真=iStock.com/golfcphoto
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ここでは、その意見の実証的な根拠を示す、プリンストン大学のミューラーとカリフォルニア大学ロサンゼルス校のオッペンハイマーの有名な研究を紹介します。

実験内容
15分ほどのTEDトークを見た65人の男性に、関係ない課題を2つほどこなしてもらい、動画を見た30分後に内容に関する質問をし、記憶力をテストした。被験者はTEDトークの内容をメモしており、手書きでメモするグループと、キーボード入力でメモするグループに分かれた。

結果としては、トーク内容を手書きでノートに記録した生徒たちのほうが、内容の理解と記憶によい結果が出ています。

その理由としては、手書きでメモをとる人は、キーボードのタイピングよりも記録スピードが遅いこともあり、自分なりに頭の中でまとめる作業が発生していることが挙げられそうです。

想起努力仮説のように、脳内で要約するための負荷が発生しており、記憶の定着に結びつきやすいと考えられます。

タブレットは“書くこと”に注意を奪われやすい

また、ノルウェー科学技術大学のアスクビックらによる同様の研究では、「ペンで紙を押し付けたり、手書きした自分の文字を見たり、手書きしている最中の音を聞いたりすることで、多くの感覚が活性化され、これらの感覚経験が脳のさまざまな領域との接点を生み出し、学習のために脳を開放する」と述べられており、紙と筆記具という道具の使用も、脳に刺激を与えていると考えられます。

とはいえ、タイピングの記録スピードは大きな武器ですし、絶対に手書きがいい、といいたいわけではありません。

デジタルデバイスも超速の進歩を遂げています。iPadとApple Pencilなどで手書きのメモを利用する人も増えています。

今後、前提条件が大きく変わっていくであろう、手を使った記録──あるいは音声入力がメインになる可能性もあるかもしれません──のやり方の違いによる研究が進んでいくと考えられます。

その進展と、研究のスピードを飛び越えるような新技術の誕生などによって、科学的な正解もどんどん上書きされていく可能性は十二分にあります。

たとえば、株式会社センタンとコクヨS&T株式会社と、広島大学の入戸野による共同研究では、タブレットは紙への手書きよりも、書いた文字の確認に認知的努力が必要になり、字を書くこと自体に注意を奪われやすい傾向があるとされています。

紙に書くほうがストレスがないということです。