中国が軍の近代化の一環として潜水艦能力を強化しているのに対抗し、中国の周辺のアメリカの同盟諸国が能力の強化を急いでいる。
オーストラリアやインドのような国々は今、「P8(ポセイドン)」と呼ばれる旅客機サイズの対潜哨戒機を次々と発注している。この2カ国は日本とアメリカと共に、「自由で開かれたインド太平洋」を目指す枠組み「クアッド(日米豪印戦略対話)」を形成している。
ドイツ、ノルウェーやイギリスのように中国から遠く離れた国々も、同哨戒機を購入している。米国防総省のある諜報担当者は、各国が次々と対潜水艦システムを購入しているのは、偶然ではないと指摘する。
「中国は水中戦の戦闘能力を、南シナ海の外にも拡大しつつある。中国と領有権争いを繰り広げている国々だけではなく、太平洋地域全体にとっての戦略的脅威だ」と、前述の諜報担当者は本誌に語った。「同盟関係にあるすべての国々が、中国の潜水艦を監視および探知できる能力を持つことが不可欠だ。P8哨戒機は、そのタスクを実行するための最高の能力を備えている」
さらにこの人物は、次のように述べた。「高度の対潜戦闘能力も備えたP8哨戒機は、中国の潜水艦に対抗する上での最善の解決策だ」
主要2モデルの潜水艦の改修計画も
対潜哨戒機P8およびP8Aを製造している米航空大手ボーイングの広報担当者によれば、同哨戒機は「世界中に配備されている。これまでに135機以上が就役しており、40万時間以上を無事故で飛行している」。
だが中国の軍事力もまた増強を続けている。
米国防総省は、2020年9月に発表した中国の軍事力に関する報告書(2020年版)の中で、中国は攻撃型通常動力潜水艦を50隻、攻撃型原子力潜水艦を6隻、さらに弾道ミサイル原子力潜水艦を4隻保有していると推定している。アメリカは68隻の潜水艦(いずれも原子力潜水艦)を保有していると推定されるが、中国は保有数を急速に増やしている。
同報告書は、中国海軍にとって潜水艦の開発は「優先度が高い」と説明。中国海軍は「2020年代を通して65隻から70隻の潜水艦を維持する可能性が高く、古くなった潜水艦は随時、より高機能のものと交換していくだろう」と推定する。
またフランスの専門家エリック・ジェネベルと、かつて米海軍の潜水艦技師だったリチャード・W・スターンが9月に発表した報告書によれば、中国は「夏」級092型と「晋」級094型の2つの主要モデルの潜水艦について、改修を計画しているという。