だが中国側は、対空攻撃能力も強化している。
人民解放軍は、中国本土だけではなく南シナ海にある複数の島にも、地対空ミサイルシステムを配備している。中国軍の艦船はP8哨戒機にも目を光らせており、2020年2月には、米海軍のP8A哨戒機が、中国海軍の駆逐艦からレーザーを照射されたとして同駆逐艦の乗組員らを非難した。
アメリカのパートナー諸国の多くは、P8哨戒機の調達に加えて自国の潜水艦隊の強化も行うことで、現代の海洋軍事環境に適応しようとしている。実際、アメリカのパートナー諸国と中国は兵器開発競争を展開している状態で、中国の研究調査機関「南海戦略態勢感知計画(SCSPI)」の胡波主任は、この競争においては中国の方が有利な状況にあるとの見方を示した。
「アジア太平洋における水中での軍拡競争は激しさを増している。アメリカやその他の国々による開発を受けて、中国がますます水中部門に投資を行っている状況だ」と胡波は本誌に述べ、さらにこう続けた。「中国が並外れた規模の資源や人員を総動員できることを考えると、アメリカにとって今後、状況はさらに困難になる可能性がある」
「中国の地上部隊が過去20年間で大きく発展したことが、その証拠だ」
潜水艦からのSLBM発射能力
したがって軍拡競争は続く。
オーストラリア、イギリスとアメリカは9月に新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を発表。アメリカとイギリスが、原子力潜水艦を初導入するオーストラリアを技術支援する計画も、合わせて発表された。これを受けて、中国はすぐに反発を表明。米英豪の3カ国の動きは地域の不安定化を招くと非難した。オーストラリアと先に潜水艦共同開発を約束していたフランスとの契約破棄を覚悟の上の決断だった。
また9月には、アメリカの同盟国である韓国がSLBM発射実験を成功させ、非核保有国として初めて、潜水艦からのSLBMの発射能力を持つことになった。その数週間後には、北朝鮮がSLBMを発射。核保有国である北朝鮮もまた、潜水艦の戦闘能力に投資を行っていることを示した。
韓国国防部の報道官は本誌に対して、「国防部は潜水艦の活動も含め、北朝鮮の軍事状況を注意深く監視している」と述べた。
韓国は、アメリカと強固な同盟関係を維持する一方で、中国とのつながりも維持してバランスを模索するようにもなっている。中国の同盟相手である北朝鮮に対しても、抑止と外交の両面で慎重な姿勢を取っている。