与党CDUが仲間割れ、党首辞任の異常事態
ドイツでは、まもなく16年間に及んだCDU(キリスト教民主同盟)のメルケル政権が終わりを告げようとしている。過去16年のうち12年が社民党との連立だったが、その間に、本来なら保守党であるはずのCDUが、社民党の色の濃い政策を次々に実行に移し、ドイツが静かに左傾化していった様子については、総選挙前に<「日本も他人事ではない」メルケル首相を失ったドイツ総選挙が大混乱に陥っている理由>で書いた。ただ、そのせいで社民党の株が上がったかというと、まったくその反対で、ここ10年ほどは消滅するかと思うほどの衰弱ぶりだった。
9月26日の連邦議会選挙では、その社民党(SPD)が25.7%の得票率で首位に立った。狂喜するほどの数字ではないが、それでも、瀕死の病人が立ち上がったかのように、皆が驚いた。さらに意外だったのはCDU/CSUの激しい落ち込みで、たったの24.1%。党が始まって以来の最低記録だった。
そんなわけで、開票後の一瞬は、1位の社民党と2位のCDU/CSU、どちらが政権をとるかは連立次第と、スリリングな気運が満ちた。ところが、蓋を開けてみたらCDUは責任のなすりつけあい、仲間割れで乱れに乱れ、とても政権を担当できるような状態ではないことが露呈。ラシェット党首は敗北の全責任を押しつけられ、辞任に追い込まれたため(選挙後、党内で意見が一致したのは、これぐらいではないか)、CDUはいまだに党首がいない。それにしても、この壊滅状態をよくも今まで隠し通せていたものだと、皆が呆れ返っている。
当のメルケル首相はただ1人上機嫌で…
一方、まだ首相であるはずのメルケル氏は、自党の大混乱にはわれ関せずで、ましてや、自分に責任の一端があるとも思っていないらしく、各国をお別れ訪問中。26日、ベルリンの大統領府で内閣の任が解かれる式典が行われた際には、これから下野を控えて沈鬱な表情のCDU/CSUの大臣たちの横で、1人なぜか上機嫌だった。
外遊先の各国では“偉大な”功績を褒めたたえられているが、自国内での「功績」のほうは今後、問題化してくるはずだ。おそらく次期政権は、まずはメルケル政権の残した瓦礫の山の片付けに追われることになるだろう。