肝心の連立だが、社民党は、緑の党、自民党(FDP)と10月21日より3党連立を目指して本協議に入っている。しかし、社民党と緑の党の方針と、自民党のそれはかなり違うため、どのように落とし所を見つけるのかが注目されている。これがうまくいけば、ドイツには16年ぶりに(中道)左派政権が成立し、12月16日にはショルツ新首相がEU首脳会議の初舞台を踏むことになる。

新政権はメルケル首相の対中政策を引き継ぐのか?

さて、ドイツの政治家が新政権樹立に取り組んでいる現在、世界の各国は「その後」を探っている。特に、ドイツの対中政策が変わるのか、変わらないのか、それを気にかけている傍観者は多い。

メルケル首相の中国寄りは知らぬ者がいない。中国がダンピングなどでEUの制裁を受けそうになると、それを助けるのが常にメルケル首相の役目だった。メルケル首相ほど中国で愛されている外国人首脳はいないだろう。

中国は2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟した。当時、EUは、15年後には中国をEUの定める「市場経済国」の仲間に入れると決めたが、2016年、それを時期尚早として却下した。15年たっても、中国は市場を共有できるレベルにはなっていないという判断からだった。中国はもちろん怒った。

ちょうどその頃、メルケル首相は中国を訪問していたが、李克強首相の態度は普段とは打って変わって厳しかった。それどころか彼はメルケル首相に対して、「私たちはEUが義務を行使すること、そしてドイツ側が今まで通りポジティブな役割を演じてくれることを期待する」とまで迫った。

しかしメルケル首相はこのプレッシャーに怖気づくこともなく、のらりくらりとかわした。そして、こういう手強い相手には、中国はちゃんと敬意を表するらしく、その後も独中関係が崩れることはなかった。日本にはこういう心臓の政治家が見当たらないのが残念だ。

どのみち変えられないのなら仲良くして儲けたい

先月14日には、習近平国家主席がビデオでメルケル首相に対して「old friend」と呼びかけ、素晴らしい餞別の辞を贈った。old friendは中国では最大の敬意のこめられた言葉だそうだが、メルケル政権の16年にわたる努力のおかげで、ドイツ経済と中国経済は二人三脚で、ともに目眩まばゆいほどの経済発展を果たしたのだから、これはただのお世辞ではない。しかし一方、その中国が一党独裁であり、人権問題でそれほど潔白ではないことも事実で、それも誰もが知っている。