2ちゃんねる創設者のひろゆきさんが今人気だ。文筆家の御田寺圭さんは「地上波の有名人としてのポジションを確立している。世の中の“インテリ嫌い”の空気を味方につけたことが背景にある」という――。
モノクロの古いテレビ
写真=iStock.com/Grassetto
※写真はイメージです

「2ch管理人」から「お茶の間の物知り兄ちゃん」へ

いま「ひろゆき」が、お茶の間で急速に認知度と好感度を獲得している。

「ひろゆき」とはほかでもない、匿名掲示板「2ちゃんねる」の創設者である西村博之氏である。テレビを見ない人には信じられないかもしれないが、現在の西村氏はテレビをはじめとする主流メディアで引っ張りだこの人気タレントの仲間入りを果たしている。

知る人ぞ知る「2ch管理人」だった西村氏は、もはや「アングラ・ネットの有名人」の枠をすでに飛び越えて「地上波の有名人」としてのポジションを確立している。パンデミックのなか、芸能人の別室からのリモート出演のスタイルが定番化しているという時代の変化も彼の追い風となったのか、在住している遠く離れたフランスからインターネット中継で出演する氏のスタイルは、とくに抵抗感なくお茶の間に受け入れられたようだ。

西村氏はいま若者層を中心としてファンを急速に拡大していることは事実である。たとえば、ソニー生命によるアンケート調査「中高生が思い描く将来についての意識調査2021」では、「将来のことを相談したいと思う有名人」の3位に西村氏がランクインしている。また、「“将来、こういう大人になりたい”と思う有名人」でも10位である。

2000年代において、日本の「アングラ」文化の主要人物でありながら、いまやテレビタレントとなり、中高生の憧れの的となっている。活躍期間の「息の長さ」にも、またそのポジションの「転身」ぶりにも驚かされるばかりである。

西村氏が出演しているABEMAの番組『マッドマックスTV』の宣伝動画(ABEMAバラエティ【公式】より)

SNSでしばしば指摘されている「誤り」

「論破王」の愛称で親しまれ、さながらお茶の間のご意見番となっている西村博之氏(あるいは同じ系統のタレントとして、お笑い芸人でありながら知識系Youtuberとしても各方面で活躍するオリエンタルラジオ・中田敦彦氏など)は、しかしながらネット上とりわけSNSでの評判はすこぶる悪い。

というのも、西村氏個人の価値判断や意見表明はともかくとして、さまざまな分野に幅広く通じているという体で披露される知識や情報には、事実誤認や虚偽が多く含まれているためだ。

西村氏の不正確な、あるいは端的に事実誤認に基づく情報発信は、SNS上でしばしば批判や嘲笑の的となっている。相対性理論に関する事実誤認、総合格闘技についての誤った解説、フランス語についての基本的理解の誤りなどは、その道のプロからの指摘や批判が相次ぎ大きな物議を醸した。