「都心部のビルイン店でも好意的で、今のところネガティブな声は一切ありません」(同)

どんな反響になるか心配だった。実は、埼玉県から宮崎県まで全国25店でトライアル(テスト施行)した上でスタートしたという。検討時は、髪色について保守的な声もあった。

「当初は、それまでのダークブラウンのような自然な発色をベースに考えましたが、あまり定義しすぎるのもどうか、という意見もありました。経営陣から『自由にしていいんじゃないか』という声も上がり、髪色を自由にしたのです」

林さんは「オフィスの雰囲気が明るくなり、社員の個性がよく見えるようになった」と話す
撮影=プレジデントオンライン編集部
林さんは「オフィスの雰囲気が明るくなり、社員の個性がよく見えるようになった」と話す

「見た目で判断する風潮を社内から変えよう」

社内の結論を後押ししたのが「パートナーを『この髪色だから』と定義してしまうと、お客さまに対しても見た目で定義してしまうことになりかねません」(同)という意見だった。「見た目で人を判断する風潮を社内から変えていこう」という思いの表れともいえる。

「バイアスをかける」という言葉があり、ビジネス現場でも用いられる。「その人の先入観や偏見で相手や振る舞いを判断する」という意味だ。近年は「LGBTQ+」(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・クエスチョニング・クィア)など性差や個人の嗜好で相手を判断しない意識も高まった。それを髪色基準にも応用したのだろう。

「店内の雰囲気が明るくなった」と好評

続いて話を聞いたのは、都内の店舗で働く30代の店長(ストアマネージャー)2人だ。

戸澤圭太さん(表参道ヒルズ店ストアマネージャー)は前述のトライアルメンバーにも選ばれて準備を進めた。8月2日以降、店の雰囲気はどう変わったのか。

表参道ヒルズ店ストアマネージャーの戸澤圭太さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
表参道ヒルズ店ストアマネージャーの戸澤圭太さん

「最初は36人いるパートナー(交代制勤務)は、新しいドレスコードにそわそわしていました。でも1週間もたたないうちに、より楽しそうに働くようになりました。帽子をかぶって短パンで働くパートナーもいます」(同)

表参道ヒルズ店の来店客には近隣の会社や店舗で働く人も多い。「コロナ前は外国人のお客さまが50%ほどいた店でした。近くに小学校もあるので先生やお母さんたちも来られます。『店内の雰囲気が明るくなったわね』とも言われます」。

東京出身の戸澤さんは大学4年間、都内のスタバでバイト。卒業後はコンサルティング会社に就職して丸の内のオフィスで働いたが、体調を崩して退職。「居場所を感じられなくなり、学生時代に楽しく働けたスターバックスに26歳でアルバイトとして戻りました」(同)。その後に社員となり、ストアマネージャー職に就いたので思いもひとしおだ。