どの国の王室にもプレスオフィサー、広報担当官が何人もいるのに

Q:世界のロイヤルファミリーの役割はどう変わってきましたか。

かつては統治者だったが、今では、サウジアラビアなどを除けば、彼らの役割は「象徴」的なもので、求められる役割も変化している。例えば、外交などでの役割。海外訪問で、国産のファッションブランドを着て、さりげなくその宣伝をする。自分の国をプロモートし、観光・ツーリズムPRにも積極的に取り組んでいる。海外から多くの人が宮殿など、王室関連の施設を訪れ、関連のお土産を買う。そうやって、莫大な経済効果を生んでいる。

また、チャリティーや社会的活動のイニシアチブをとっている。環境問題や精神医療、孤独問題などについても積極的に声を上げている。スウェーデン、モナコ、デンマークなどの王室も自分たちで財団を立ちあげ、社会貢献活動に熱心に取り組んでいる。市民の模範として、積極的に社会の中で活動をするという姿勢だ。

Q:日本の皇室とは異なるスタイルですが、国民とのコミュニケーションに関して世界の王室のスタンスはどのように変化していますか。

ソーシャルメディアの活用など積極的にコミュニケーションを進めている。スウェーデンの王室メンバーはそれぞれ、インスタグラムのページを持っており、彼らがコメントし、子供たちの写真を上げている。そうやって情報開示に熱心な一方で、メディアも私生活などを執拗しつように追いかけたりはしない。プライバシーと情報公開のバランスがとれている。

結婚の記者会見を終え、退席する小室圭さん(左)と眞子さん=2021年10月26日午後、東京都千代田区[代表撮影]
結婚の記者会見を終え、退席する小室圭さん(左)と眞子さん=2021年10月26日午後、東京都千代田区[代表撮影](写真=時事通信フォト)

ノルウェーの王室もインスタなどを活用。英王室もツイッターやYouTubeなどを活用し、頻繁にコミュニケーションをとっている。パンデミック下でも、ビデオメッセージ、ビデオでの国民との対話など熱心に行っており、常にオープンであり続けようとしている。

エリザベス王妃いわく「信じてもらうためには見てもらわなければならない」(You have to be seen to be believed)と言っている。国民の信託を受けるには、何より国民と向き合い、コミュニケーションを続けていくことが大切だという考え方だ。

アジアでも例えば、ブータンの王室にも、インスタやフェイスブックのアカウントがあるし、頻繁にプレスリリースを出す。広報の担当者がおり、すぐに応答してくれるなど、積極的にコミュニケーションを取っている。国の伝統を守りながらも、王室の近代化を進めている印象だ。

Q:王室(皇室)にとっても、コミュニケーションが何より大切、ということでしょうか。

「皇室がただ皇居にいるだけ」では、なんで彼らが必要なのか、と人々は思うだろう。それは危険なゲームだ。税金を使う存在である以上、コミュニケーションは必須だ。

どの国のロイヤルファミリーにも、プレスオフィサー、広報担当官が何人もおり、戦略的にコミュニケーションを展開している。日本(の宮内庁)には、コンタクトするべき広報責任者もいない。発信する情報も決して多くはなく、そのやり方も一方的で、対話という形になっていない。これでは、国民の満足も得られないのではないか。