専門家は、やるべきことをやらなかった

東京都で検査陽性者に何が起きていたかを少し整理してみましょう(注4)。第5波では、自宅療養や入院調整中の方が激増し、医療機関への負荷が強まりました。政府は補助金のインセンティブを設けましたが、入院数は頭打ちになっています。

専門家たちがコロナ用分類を早急に策定して、適切に助言を行い全国で初期治療を指示し病床を整えるという「やるべきこと」をやっていたら自宅療養で苦しむ人も減り国の行事も無事に行えたことでしょう。こういった、やるべきことはやらず自粛強要と政治的な領域にまで越権して「政治的メッセージ」を送っていたわけです。

フタをあけたらこんなことだったのです。自分たちは一切間違えていない。自分たちのアドバイスを聞かずに、政府が勝手にやった。なぜやるかの国民への説明も不足してできなかったから首相は辞任したのだ――。こんな主張をしています。

専門家は言うことを聞かない国民を自分たちに従わせる法整備の必要性も、恐怖を背景にして繰り返し発言してきました。厳しい選挙を経た「選良」ではない人々が、国難でもないコロナを使って政治家を越える力を発揮するのは間違っています。彼らは、「感染者数増大」に対する私たちの恐怖心を力のみなもとにしてきました。だから私たちが、感染者数の呪縛から解き放たれなくてはいけないのです。

新規陽性者数を目安にした弊害

私は、選挙で国民に選ばれた政治家の人々が国の方針を運営すべきだと思っています。彼らの下に、日本のために働く専門家より賢いエリート官僚もついています。岸田首相が、医療体制を拡充し、「『幽霊病床』の見える化を進める」(注5)と述べたのは、専門家によってブラックボックス化したものを政治家主導で透明化させる一歩だと思っています。

大切なのは「ウイルスがどれだけ人々に被害を与えるか」です。これから冬を迎えて陽性者は増加するかもしれません。しかし、陽性者数に一喜一憂する必要はありません。これからは重症者数だけをカウントし、それに応じた病床を準備すればよいでしょう。

もし重症者が増えずに感染者数だけが増えるなら、免疫をつけるためにかえって良いことです。感染者が増えたら警戒すれば十分です。専門家がうごめき出してもまつりごとを行う人々が自ら指揮を取って人流制限による過剰な社会破壊を行わないようにする必要があります。