国内材でつくられた家具や玩具などは国内に戻り販売されるとともに、ベトナムから世界へと輸出されるようになった。清水社長は「2015年にプロジェクトを立ち上げ、中小企業としては大変な赤字を抱えてきましたが、ようやくこの1、2年で単年度黒字になりました。これからはIKONIHを会社の中心に据えていきたい」と話す。

現在、IKONIHの売上高は約10億円。清水社長が始めた中国からのポプラ材の輸入が約40億円と多いが、これを逆転させ、ゆくゆくはIKONIH事業だけで生きていける会社にしたいという。

“危機感”と“持続性の追求”が会社を変えた

この6年間でIKONIH事業のサプライチェーンをつくり上げ、事業変革への基盤を整えた。短い間に会社のカタチを大きく変えられたことに驚く。

「IKONIH」の木製玩具-はNHKの朝の連ドラに登場した
「IKONIH」の木製玩具はNHKの朝の連ドラに登場した(筆者撮影)

新規事業を始めたころには南洋材の輸入業にどっぷりつかったベテラン社員は反発したが、南洋材の輸入業がメインだったころの取引先は今では売上高の1.2%にまで減った。現在の取引先のほとんどは清水社長が就任後に開拓した取引先である。

なぜ劇的に事業変革は進んだのだろうか。

清水社長が取材中、何度も口にしたのが「事業の持続性」というキーワードである。15年前に社長になったころに感じたのは、海外の森林を収奪するような持続性のない事業はしたくないという思いだった。

だからこそ清水社長は荒れた国内の森林を再生し、廃材も出さない仕組みをつくり、国内の森林の持続可能性を高めた。一方で国内だけでは競争力を維持できないと考え、生産性を高めるためにグローバルで効率的な生産、販売システムをつくり上げて、競争力の持続性を確保したといえる。

変化の激しい時代に会社が生き残っていくには変化を恐れてはならないことは自明である。そのためには「このままの事業では持続性がない。会社がつぶれてしまう」という強い危機感を持たねば変化には踏み出せない。事業の持続性をひたすら追求すればこそ変化への動きが加速したのだと思う。それが結果的に地球環境の持続性を担保しようとするSDGsともシンクロする結果になっているのだ。

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