会社も、日本の森林も守る新事業
林業会社は林地残材となっていた根っ子や枝などを含めてすべての木材を買い取る。国内の森林資源を捨てることなくすべてを利用するためだ。
従来木材として使われていた部分で子ども用の家具をつくり、より小さな材木は木製玩具となる。さらに小さな切れ端は木製のキーホルダーやSDGsバッジづくりなどに生かされる。おが屑は天然の消臭剤や精油となり、芳香ミストにも生まれ変わる。
森林資源を無駄なく使い切り、新たに加わった付加価値を植林事業に回すという構想が出来上がった。国内の森林を持続可能なものにし、しかもそこから新たな経済的な価値を生み出すサプライチェーンを創り出そうとした。
自然環境を維持し、そのうえで自然をさらに豊かにするグリーンな事業に自社の事業構造を変えていく――まさにカーボンニュートラル(CO2の実質排出量ゼロ)の実現に向けて注目されるグリーントランスフォーメーション(GX)、そのものだった。
清水社長はこの構想のブランド名を「IKONIH(アイコニー)」と名付け、全国の材木業者に声をかけた。ちなみに「IKONIH」は今では日本だけで伐採される日本を代表する木であるヒノキのローマ字表記を逆さまにしたものだ。
国産木材を、ベトナムから世界へ
これまでに北海道から九州までの9社の材木業者がIKONIHに参加し、地元の森林の植林・整備、集材、IKONIHの販売を手掛けている。丸紅木材を含め10社が集めた材木は、2018年にベトナムで新設した工場に送られ、家具や玩具などに加工される。
ベトナムに生産拠点を作ったのは①日本にはなくなりつつあった玩具などのモノづくり技術がベトナムにはあったこと②労働集約型の作業が多く労働コストが安いこと③日本だけではなく中国、韓国、台湾、オーストラリア、米国など世界への供給拠点にすること、などが理由だった。