清水社長は「社長になる前から、ただ単に木材を輸入し、国内で売るというビジネスは持続可能性がないと思っていました。このままでは会社がつぶれるという危機感もありました」と振り返る。

そのころ乗り出したのが中国事業。中国で植林されているポプラを中国で住宅建材として加工・プレカットし、輸入する事業だ。

成長が早く、10年以内に大きく育つポプラなら伐採しても再植林すれば森林資源を減らすことはない。環境とビジネスの持続性が確保できるうえ、丸紅木材としては木材加工という新規事業にも乗り出し、新しい価値を生み出すことができた。

カットの木
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「もったいない」国産材の新市場に参入

さらに事業構造の転換に大きく踏み出すきっかけになったのが2015年の出来事である。九州支店で働いていたころの友人から写メが送られてきた。燃料になる木質バイオマス用に切り出されたヒノキが映っていた。友人はそのヒノキを熊本で運ぶトラック運転手だった。友人の写メにはメッセージがついていた。

「燃やすのはもったいない。何かに使えないのか? 一度見に来ないか」

清水社長はヒノキの写真を見て、「まだ使える材木もある。確かにもったいない」と思ったが、それまで国産材を扱ったことはない。国内の森林の現状も詳しく知らなかった。まずは現状を知ろうと熊本に行き、現地の山を見た。

山は荒れていた。商品にできる木材は運び出されていたが、曲がり材や根っ子、枝などは放置され「林地残材」となっていた。林地残材は土砂崩れが起きれば、流木となり住宅に流れ込み、二次被害を起こしかねない。日本の森林の荒廃ぶりに清水社長は驚いた。

「山に残されている材木を使い、日本の山も再生する事業はできないか?」

清水社長は日本の森林が抱える課題の解決に乗り出していく。それが6年前だった。

2016年に熊本県八代市に林業会社をつくり、初めて国内の山を管理し、原木を切りだすようになった。写メで山の苦境を教えてくれた友人はその後、林業学校で学び、林業会社の社長に就いた。