会社任せだった…政府の再配分設計が極めて重要になる
これは企業が社会においてどのような機能を果たすべきかという信念の話です。企業を社会の公器ととらえる考え方は、企業にかなり大きなものを期待するものです。働く人のスキル形成を促進し、時には介入したとしても、生活を守るべきだという考え方であり、パターナリズムとも呼ばれることもあります。
この考え方からすると、45歳定年や整理解雇の規制緩和はするべきではありません。しかし、それだとどうしても企業の収益性は低くなり、イノベーションの創出や導入の程度も小さくなります。
もちろん、私たちはイノベーションを生み出すために生きているわけではありません。しかし、企業はビジネスを通じてイノベーションを生み出し、社会へ還元する主体です。企業がその機能をしっかりと果たすことができるためには、政府の再配分の設計は極めて重要です。さもなければ、個人責任という名の下に格差が広がり、分断的な社会になってしまいます。
学びなおしと女性の社会進出は欠かせない
スキルアップのための質の良い再教育の機会が開かれていることも大切です。フィンランドは大学や大学院の学費は無料(フィンランド語で行われているものであり、留学生を対象とした英語のプログラムは無料ではありません)です。スキルアップのために、大学や大学院で学びなおしやすいのです。
日本では、社会人が大学に戻り始めています。MBAは増えていますし、その他のプログラムも少しずつ増えてきています。無償ではありませんが、国公立の学費はなんとか抑えられていますし、私立大学もアメリカの大学と比べると圧倒的に低く抑えられています。
スキルアップの機会を提供するのは大学や大学院だけではありません。夜間の高校や専門学校、あるいはオンラインのプログラムもあるでしょう。もっと安く、質の良いスキルアップの機会が提供されることは大切です。
また、女性の社会進出は不可欠です。家計が一人の収入でやりくりされているいわゆる一本足打法だと、大きなキャリアチェンジやそのための自分への大型投資をしにくいでしょう。しかし、家計が複数の収入源を持っていれば、どちらかがある一定の期間、自分への投資を行うこともやりやすくなるはずです。