東京五輪を見て、日本の様子にがぜん興味を持ったという60代の英国人女性は筆者にそう話してくれた。天皇になる順番を定めた「皇位継承順位」の対象となっている皇族がわずか3人しかおらず、「皇室消滅の危機」が迫っているからだ。
いま世界で“エンペラー”を名乗れる国家元首は日本の天皇しか存在しない。前述の記者は「エリザベス女王は90歳を超え、世界中の人々に愛されていますが、欧州における君主の序列で言ったら、“キング”や“クイーン”は“エンペラー”より下で、匹敵するのはローマ法王だけなんです。天皇家やそれを仰ぐ日本の皆さんに尊敬の念を持つ英国人もいますね」と話す。
「王位継承順位」は5000番目前後に、皇室は3人だけ
一方、そうした英国人は、日本の皇室家系図を眺めると皆驚くという。女系天皇が許されない、女子(内親王)は結婚と同時に皇室から外れる、という仕組みについて「時代遅れだ」「伝統を重視しすぎている」といった意見が支配的だ。ちなみに、英国の1701年に制定された王位継承法は基本的に女性の王位就任を容認している。
そうして定められた「王位継承順位」は現在、エリザベス女王と先に亡くなられたエディンバラ公爵フィリップ王配夫妻の直系家系だけみても24人が並ぶ。それだけでなく、英国の場合は、17世紀に存命だったハノーファー選帝侯妃のゾフィーを起点に順位が決められているため、ファミリーツリーが欧州の多くの国に広がっており、細かくみていくと5000位前後まで追える、とされる。
あくまで試算だが、昭和天皇と香淳皇后夫妻を起点とした家系図に降嫁した女性皇族のその後を追った上で、「男女同等とみなす」として継承順位を振っていくと、ギリギリ2桁に乗る規模だ。しかし現状では男系天皇に限るとする皇位継承順位は、わずか3位までで途切れてしまっている。
男性しか継げないのは「何ともナンセンス」
皇室で最年少の男性皇族は、眞子さまの弟である悠仁親王だ。こうした事情を知る英国人たちからは「年端がいかない15歳の少年に、『将来の妻になる女性に何がなんでも男子を産め』と今から言っているようなもの」とその不条理さを指摘する意見も聞こえる。
そんな英国人の懸念をよそに、日本では「女系天皇反対」を明確に主張する岸田文雄氏が新たに首相の座に就いた。31日に投開票を迎える衆院選で自民党が勝てば、現行の皇室典範に手が入る可能性はより低くなるだろう。