着実に実現してきた「マスタープラン」
「スポーツカーを作る」は08年に出荷を開始した、最高時速201キロ、約4秒で時速約97キロまで加速するロードスター(販売価格は約1000万円)のことだ。
「②その売り上げで手頃な価格のクルマを作る」は12年から販売を開始した750万円以上のEVセダンのモデルSで、「③さらにその売り上げで、もっと手頃な価格のクルマを作る」が17年から売り出した約380万円台のモデル3である。
「④ゼロエミッションの発電オプションを提供する」は屋根一体型の太陽光発電パネル「ソーラールーフ」と、蓄電池の「パワーウォール(家庭用)」と「パワーパック(企業用)」であることは言うまでもない。これにより、テスラは単なる自動車メーカーではなく、持続可能なエネルギー企業となった。
しかし、2006年当時に「マスタープラン」を目にした人たちは、「まだ1台もクルマを出荷してもないベンチャーが、何をわけのわからないことを言う」とばかにした。つまり、イーロンの発言はリアルタイムでは理解できないことも多いのだ。
今後、もし死亡事故が起きても自動運転を進めるイーロン・マスク
ベスト・エフォート型で自動運転開発を進めるイーロンは、これからも死亡事故が起きようとその歩みを止めることはないだろう。たとえテスラの株価が下がろうとだ。
なぜなら、多大なリスクを取ることで、テスラや、イーロン率いるもうひとつの企業スペースXを、他社の何倍も速いスピードで成長させてきた輝かしい実績と、過剰な自信があるからだ。
とはいえ、今後はさらに安価なモデルを発表することが予想される以上、いままでのように尖ったテスラユーザーにだけアピールするだけでは販売台数を伸ばすことはできない。
販売台数を前年上半期の2倍に伸ばしたEVモデル3(販売価格3万5000ドル)の次に登場する2万5000ドルのEVは、これまでの尖ったテスラユーザーではなく、一般ユーザーが購買主体となる。それだけに、彼らに現状を正しく伝える言葉がより重要となってくるといえる。