9月から次世代中型機ボーイング787型機(以下、B787)の納入が世界に先駆けて始まる見込みだ。

B787の主な特徴は4 つある。

ANAは中型機をすべてB787に集約する。(PANA=写真)

ANAは中型機をすべてB787に集約する。(PANA=写真)

(1)燃費が従来機より約20%向上。
(2)近距離、長距離でも運航可能な高い汎用性。
(3)機体の50%を腐食の少ない炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で製造しており、整備費を約30%削減可。
(4)機内の気圧、温度、湿度を改善し、乗客の疲労感を軽減。

航空会社には、高い経済性が最大の魅力だ。

ANAはB787のローンチカスタマー(新型機製造決定の後ろ盾となる最初の顧客)として55機を導入する。カタログ価格ベースで7000億円に上る投資だ。同社の狙いはどこにあるのか。

1つは、企業イメージの向上にある。世界に先駆けた最新鋭機の導入で消費者の注目を集め、先行者利益を狙う。

2つ目は、最初の顧客として要望を反映させること。ANAの要望により、操縦室窓のワイパーやシャワートイレも世界で初めて搭載される。

3つ目は、納入価格を抑えること。JALもB787を35機導入し、来春、成田~ボストン便に就航させる予定だが、購入価格はおそらくANAよりも高い。これもローンチカスタマーの特権だ。

ANAは今年度中にB787を14機受領し、成田~香港、羽田~広島/岡山など、競争の激しい区間に就航させる予定だ。B787は燃費効率がよく、航続距離も長いため、将来的には日本の航空会社が直行便を飛ばしていないスイスのジュネーブや中東のドバイなど、新路線の誕生が期待できる。

現在、同機の発注は世界で850機に上る。今後10年間は、航空機市場でヒット商品となる可能性が高い。同機の35%には、CFRPを提供する東レや機体の製造を担う三菱重工、川崎重工などの技術が反映されている。日本の製造業にとっても、強力な起爆剤となろう。

※すべて雑誌掲載当時

(構成=プレジデント編集部 写真=PANA)