――ここ2カ月の間で、ノルウェーのオスロ連続テロ事件や、ロンドンの暴動など、移民の社会統合の失敗が原因だと指摘される出来事が続いています。

オスロ連続テロ事件は、移民問題とは何の関係もありません。精神病院には「俺はナポレオンである」と本気で信じている患者がよくいますが、ノルウェーの事件も妄想に基づいた犯行です。もっとも、そのような妄想が、現実の移民問題を難しくしている面はあります……。宗教心が消え失せた現代社会には、自己陶酔的な超個人主義、怒り、虚しさが蔓延しています。これが移民排斥の温床にもなっています。

いずれにせよ、戦後、ヨーロッパが移民を受け入れなかったのであれば、イタリアやスペイン等の経済は成り立たず、これらの国は消滅していたでしょう。ヨーロッパは、移民なしには成り立たないのです。

――ギリシャの破綻、フランス国債の格下げ懸念など、単一通貨ユーロの危機が叫ばれています。今後、ユーロはどうなるのでしょうか。ヨーロッパ連合(EU)は、ユーロがなければ成り立たないのではないですか。

ユーロの運命はすでに尽きました。おそらく早晩、ユーロは消滅するでしょう。私は導入以前からユーロに反対でした。例えば、フランスとドイツは隣国同士であっても、合計特殊出生率は、大きく異なります。ドイツにならってフランスも財政赤字を削減すべきだ、との声も聞かれますが、ドイツにならってフランスも出生率を3割減らせとは、誰も思わないでしょう。

つまり、通貨を人為的に共通化することによっても、国民のライフスタイルをヨーロッパとして統一することはできないのです。先ほどの移民政策にしてもしかり。フランス型の移民モデルが、日本に当てはまるとは思えません。要するに、文化が異なるなかで社会システムを統一すれば、無理が生じるのは当たり前です。

ヨーロッパの理念は、民主主義、自由、国家間の平等です。国力の違いで、国の扱いが変わってはいけないのです。けれども個人的には、人口約6000万人のフランスが、約50万人の小国ルクセンブルクと同列に扱われるのには納得できません(笑)。