インタビューを終えて 林 昌宏

「トッドは、規格外の人物。自由に物事を考える彼の取り組みには、心から敬意を払っている。彼こそ正真正銘の自由人。だからこそ動物的な勘が働き、これまでにも次々と予言を的中させたのだ」。これはトッド氏の所属するINED(フランス国立人口統計学研究所)の元所長であり、私の友人であるフランソワ・エラン氏の弁である。

取材班と昼食の際、トッド氏は語った。「私には金銭欲はないし、社会的に昇進しようとも思わない。INEDでも重要なポストに就こうなんて気はまったくない。フランソワ・エランには、今でも心から感謝しているよ。だって、INEDに籍を置かせてもらって、自由にやらせてもらったんだから」。トッド氏が日本人だったら、日本の学界に彼の居場所はなかったであろう。

自由奔放な人生を送りながらも、全世界が注目する著名な学者。ちょっと過激でありながらも、フランス世論に大きな影響力を持つ人物。トッド氏の著作は、専門性の高いものであっても、ベストセラーになっている。トッド氏の最大の魅力は、大胆な仮説を打ち立て分析する、思いきりのよさなのではないか。これこそ自由なエスプリ(精神)の表れであろう。

(大沢尚芳=撮影)