――日本も将来は、「フランス型の移民モデル」を採用すべきでしょうか。
<strong>エマニュエル・トッド</strong> Emmanuel Todd●1951年、フランス生まれ。パリ政治学院卒業後、ケンブリッジ大学で博士号を取得。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。弱冠25歳にして、『最後の転落』で乳児死亡率の上昇を論拠に旧ソ連の崩壊を断言。アメリカの衰退を指摘した『帝国以後』は28カ国以上で翻訳された。
エマニュエル・トッド
Emmanuel Todd
1951年、フランス生まれ。パリ政治学院卒業後、ケンブリッジ大学で博士号を取得。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。弱冠25歳にして、『最後の転落』で乳児死亡率の上昇を論拠に旧ソ連の崩壊を断言。アメリカの衰退を指摘した『帝国以後』は28カ国以上で翻訳された。

日本社会の伝統や家族形態に基づく価値観の面から考えると、日本社会は移民受け入れによって、明治維新並みの衝撃を受ける恐れがあるでしょう。

率直に言って、フランス型移民モデルは、日本にお勧めできません。ドイツが東欧諸国からの移民を大量に受け入れているように、日本も自分たちと身体的特徴の似通ったアジア系の移民を受け入れて、「忘れやすい移民」という、忘却型モデルを採用することになるのではないでしょうか。

私は、肌の色を問題にすること自体、奇妙なことであり、不謹慎だと考えるフランス人であり、またどんな人物であろうとも一人とカウントする人口学者です。もちろん私は、日本人を人種差別主義者だと糾弾しているわけではまったくありません。しかし、日本がフランス型の普遍主義をまともに採用するのは、やめたほうがよいと思います。これは、人口学者ではなく、人類学者としての立場からの考えです。

――フランスの自由・平等・博愛、さらには脱宗教の精神をもってしても、普遍主義の貫徹は難しいのだから、日本はやめておけということですか。

私は普遍主義者であり、フランス人であることを誇りに思っていますが、日本がフランスとは別の原理によって成り立っているということも、人類学者として十分に理解しています。